「熟練者いらず」…工作機械メーカー、最新機で競い合う
5日に開幕した第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)で、工作機械メーカーなどが作業や熟練の人手不足を補う製品・技術で競い合っている。ロボット活用と加工工程の集約だけでなく、ソフトウエアや人工知能(AI)による加工の高度な評価技術で「熟練者いらず」を打ち出す。機械加工の生産性向上で製造業復活を支援する。(総合1参照)
ニデックは傘下のマシニングセンター(MC)、旋盤、歯車加工機、横中ぐり盤の各メーカーがそろってJIMTOFに初出展する。ニデックマシンツール(滋賀県栗東市)とニデックオーケーケー(兵庫県伊丹市)の二井谷春彦社長は「旋盤からMC、歯車、大型の中ぐりまで一体で垣根なく対応できる」と、横串のサービス力を強調。金型加工では技能者に頼る表面の粗さ精度をシミュレーションで予測し、高効率に仕上げるソフトウエアも強み。ロボットによる加工対象物(ワーク)搬送や独自ソフトで省人化ニーズを取り込む。専用性が高い歯車加工を備えながら操作しやすい複合機で、各社の技術融合を打ち出す。
松浦機械製作所(福井市)は多品種少量生産での人材不足対策を総合的に示す。5軸制御MCの入門シリーズ「MX」に最大加工径520ミリメートルの旋削機能を加えた複合加工機「同―520T」は身近な工程集約の提案だ。5軸MCに自動パレット交換機(APC)と協働ロボットを組み合わせた長時間無人加工、加工関連の諸データを案件ごとに一括管理できるコンピューター利用製造(CAM)での段取り効率化も人材不足に有効だ。「ここまでできるという具体例を提示した」と松浦勝俊社長は意気込む。
ソディックはリニアモーター駆動のワイヤ放電加工機「ALN800Giグルーブ・プラス・エディション」が展示の目玉。タブレット機器で離れた事務所から複数台の遠隔操作も可能だ。またワイヤ電極に接触し、電力を供給する接触子「通電コマ」を自動でずらす機能を搭載。通電コマの消耗による絶縁を防ぎ、通常は50時間程度の連続加工を200時間程度に伸ばす。塚本英樹取締役専務執行役員は「長期のメンテナンスフリーを実現した」と自信を見せる。
熟練の技の代替も大きな課題だ。牧野フライス製作所は3軸制御立型MC「V33」シリーズを25年ぶりに刷新した「V300」で、最新の送り軸機構や制御技術により加工後のスジの現れ方を低減。金型加工の磨き工程の削減を提案する。磨き作業などを担う熟練技能者の採用が難しくなる中、高い要求精度を実現し、金型の加工需要を取り込む。白石治幸取締役開発本部長は「職人でしかできない高精度な加工を誰でもできるようにした」と胸を張る。
「人手の確保が難しいバリ取り工程の自動化に貢献する」と話すのは、スギノマシン(富山県滑川市)の杉野良暁社長。産業用ロボットの先端に取り付ける高速・高精度なバリ取りシステム「RDM―S」を出展。ワーク形状に合わせスピンドルが伸縮・傾動する「フローティング機構」を備え、ワークの削れ過ぎやバリの取り残しを防ぐ。同機構で加工時のロボットへの負荷も低減し、可搬質量7キログラムの小型ロボットで使用可能。省スペース化も実現した。
三菱電機は人工知能(AI)によるベテラン技能の代替を提案する。AI加工診断ツール「NCマシニングAID(エイド)」は、熟練技能者が加工中の音や振動、におい、ワーク表面の色艶で察知する加工異常を、同社製の数値制御(NC)装置で計測する電流値の変化で検知する。5回の加工のみでAIが閾値を認識。初心者も不良のない加工が容易にできる。他社製NC装置への対応版も2025年度に発売予定だ。
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