高生産性・ナノ級精度を追求…工作機械、米に相次ぎ新機種投入
環境性能高め需要深堀り
工作機械各社が米国で相次ぎ新機種を投入する。ヤマザキマザックはコンピューター数値制御(CNC)装置搭載の旋盤などを、アマダマシナリー(神奈川県伊勢原市)は帯のこぎり盤(バンドソー)を発売。芝浦機械はナノメートル(ナノは10億分の1)領域の加工が可能なマシニングセンター(MC)で超精密加工機市場に参入する。人手不足が深刻化する米国市場に近く投入し、生産性や精度、環境性能などを訴求して需要を深掘りする。
ヤマザキマザックは二つの主軸と三つの刃物台(タレット)を搭載したCNC旋盤「HQR―200/3NEO」と、同時5軸制御立型MC「VARIAXIS(ヴァリアクシス)i―600NEO」の受注を世界に先駆けて米国で始める。同MCでは主軸の仕様展開を増やし、高速軽切削から重切削まで幅広い加工に対応する。加工中に次の加工対象物(ワーク)の取り付けや段取り替えができる省スペース型の2パレットチェンジャーの搭載も可能で、自動化への対応力も高めた。
牧野フライス製作所は5軸横型MC「a500iR」を発売する。高剛性な機械構造の採用などにより、同社従来機と比べて加工可能なワークの最大寸法を直径で30%増、高さで50%増、最大積載量で2・7倍に拡大した。同じ大きさのワークを加工するため提案していた別の同社従来機と比べて設置面積を50%削減でき、単位面積当たりの生産性も向上した。
帯状ののこぎり刃(ブレード)を高速回転し、鋼材などを切断するバンドソーでは、アマダマシナリーが「PCSAW430AXII」を投入する。ワークの素材や加工条件に応じ、ブレードに与えるパルス振動の周波数を制御する独自機能を搭載。パルス振動が一定だった同社従来機と比べ切削速度の向上と切削抵抗の低減を実現した。消費電力も大幅に低減し、環境性能を高めた。
精密加工では芝浦機械がナノメートルオーダーの加工が可能な立型MC「UVMシリーズ」を販売する。毎分6万回転の主軸を標準装備。自社製の空気静圧軸受を主軸に採用するなどし、高速、高精度、高品位な加工を実現した。精密金型の加工などでアジアで豊富な実績があり、米国では医療分野などを開拓する。一方、ソディックはリニアモーター駆動の立型MC「UX650L」を発売する。同社従来機と比べ11%軽量化した主軸の採用などで応答性を向上し、高速・高精度な加工に磨きをかけた。
米国市場では景気や金利の動向などを見定めようと設備投資を様子見する動きが一部でみられる。一方、日本工作機械工業会の稲葉善治会長(ファナック会長)は「人手不足が深刻化しており、生産効率の良い機械の導入、省人化、自動化がどんどん進められている」とし、付加価値の提案に期待を示した。
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