NTT法見直し報告書へ意見、KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルが主張したこと
国内通信大手4社のトップが29日、総務省で開かれた通信政策特別委員会に出席し、NTT法見直し報告書への意見を表明した。NTTの島田明社長は携帯電話網を用いた固定電話の利用促進に向け前進したことを評価した。一方でKDDI、ソフトバンクと楽天モバイルはNTTが持つ電柱など通信用線路敷設基盤の売却に関する認可の強化を訴える。時代に即した形にNTT法を見直すさらなる議論の継続が求められる。(編集委員・水嶋真人)
「NTT法ができて40年で初めてユニバーサル(全国一律)サービスが変わるエポックメイキング(革新的事象)なタイミングだ」。島田NTT社長はユニバーサルサービスの議論結果を高く評価する。
NTTは銅線を用いたメタル固定電話の縮退を2035年に控える。今回の報告書により光ファイバーのほか携帯大手が提供するモバイル網を用いた固定電話サービスを提供できる方向になった。
固定電話を提供するNTT東日本、NTT西日本が他事業者の提供地域でも全国でサービス提供を担うNTT法の「電話のあまねく提供責務」が、提供事業者がいない地域に限ってサービス提供責務を負う「最終保障提供責務」に見直される点も評価した。モバイル網固定電話の指定と合わせ、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルを含む業界全体でユニバーサルサービスを支える仕組みになることで「効率的でサステナブル(持続可能)な固定電話のユニバーサルサービスが提供可能となる」(島田社長)と期待する。
これに対し、ソフトバンクの宮川潤一社長は、政府が27年度までの世帯カバー率99・9%を目指す光ファイバーこそが次世代のユニバーサルサービスの基盤になるとし、「無線と光では質が違う。全世帯に光が入ることを希望する」と述べた。このため、光ファイバーを支えるNTTの線路敷設基盤の譲渡や処分に関して認可の対象とした報告書を評価し、「(同基盤の)譲渡などは原則禁止するべきだ」と述べた。
この点に関し、KDDIやソフトバンクが新たに問題視したのは、NTTやNTTドコモによる保有株式の売却により屋内外通信設備の共用サービスを手がけるJTOWERが外資の傘下になったことだ。KDDIの高橋誠社長は、NTT東西やNTTドコモがJTOWERに売却した鉄塔が外資に流出する恐れがあるとして「日本の重要インフラが外資による規制にさらされないよう制度の強化が必要だ」とした。
また、高橋社長は今回の議論によりNTT法で緩和すべき点は改正済みとなったとし、「NTT法で強化すべき点を第2ステップとして見直すべきだ」とも主張した。
今後は、これらの議題について踏み込んだ議論が進む。楽天モバイルの三木谷浩史会長は「神は細部に宿る。これからの詳細な議論が特に重要になる」と指摘する。3社の首脳はNTT法の維持・強化に向け共同戦線を続ける見込みだ。