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NTT通数、60年で96%減…電報事業「遅きに失した感もある」規制見直し検討

NTT通数、60年で96%減…電報事業「遅きに失した感もある」規制見直し検討

規制の見直しが進む電報事業(イメージ)

電報事業に関する規制を緩和する議論が動き出した。NTTKDDIは、電子メールやショートメッセージサービス(SMS)の普及で利用が激減しているとして電報料金の認可制や電報事業廃止の許可制の見直しを要望。情報通信審議会(総務相の諮問機関)の作業部会で構成員を務める有識者も国民生活に不可欠というユニバーサル(全国一律)サービスの要件には値しなくなったとして、規制見直しに賛成する意向を示した。(編集委員・水嶋真人)

「ニーズを捉えた料金や提供条件の設定、配達コストの抜本的削減について他の特定信書便事業者と同等な条件の下で機動的な業務運営を実現したい」。NTT東日本の井上暁彦営業企画部門長はNTT法見直しに関連して5月末に開かれた情報通信審議会の作業部会で、電報事業への規制緩和を求めた。

電報は1985年の電気通信事業法制定当時、国民生活における最低限の通信手段として全国あまねく確保されるべきものであることを踏まえ、当分の間、電気通信事業とみなされた。その上でNTTとKDDIの独占事業とされ、料金関連の契約約款変更に関する認可、事業の休廃止に関する許可、業務区域の変更に関する許認可を必要とする規律を課した。

だが、22年度のNTT東西の国内電報発信通数は前年度比6・9%減の377万通と、ピークだった1963年度の9461万通から96%減少した。サービス収支も20年度に赤字に転落している。

KDDIが手がける23年度の国際電報の取扱量も307通と、直近25年で約350分の1に減少。23年度の赤字額は約800万円に達しており「大口顧客だった官公庁からも数年間利用がない。規制のあり方を見直してほしい」(KDDIの山本雄次渉外統括部長)とした。

作業部会の構成員を務める横浜国立大学大学院国際社会科学研究院の高橋賢教授は「現在の規律を維持するかしないかというゼロイチの議論をしても良いのではないか」と発言。名古屋大学大学院法学研究科の林秀弥教授も「歴史的な使命はある程度果たした」と述べ、規制緩和に賛成する声が相次いだ。

他の特定信書便事業者と同等な条件となった場合、事業の休廃止の許可制は事後の届け出制に変わり、業務区域の変更は自由に設定可能になる。料金も1通当たり800円を超えていれば変更の手続きは不要となる。

NTT東西の国内電報は、22年に電話などによる当日配達の受付時間を19時までから14時までに変更。23年に文字数単位料金からページ単位料金に変えた。電報を取り巻く環境は電気通信事業法制定時の85年から大きく変わっている。「検討するのに遅きに失した感もある」(大橋弘東大副学長)規制の見直しを急ぐ必要がありそうだ。

日刊工業新聞 2024年06月11日

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