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原子力機構など、ステンレス低温強度向上 粒微細化で延性確保
日本原子力研究開発機構(原子力機構)やJ―PARCセンターなどは、ステンレス鋼の結晶粒を1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下に超微細化することで、低温環境下でも延びやすさが大きく低下せず、強度が飛躍的に高まることを見いだした。そのメカニズムについて中性子回折などを使って解明した。今回の知見は優れた低温用構造材料の開発への応用が期待される。
一般的な金属材料は低温で強度が向上するものの、延びやすさは低下する。一方、液化天然ガス(LNG)のタンクや輸送機器、宇宙探査用の機器など低温で使われる機器や設備は多くある。それらの安全性や性能を高めるために、低温で優れた強度を持ち、延びやすい材料が求められていた。
原子力機構などは、ステンレス鋼に圧延加工と熱処理を施して結晶粒を超微細化し、室温から77ケルビンの低温までのいくつかの温度で引っ張り試験を行った。その結果、試験片に負荷をかけた時に弾性を保つ限界「弾性限」について、77ケルビンの場合は1・4ギガパスカル(ギガは10億)に向上した。室温時は1・0ギガパスカルだった。また温度を下げると、破断せずに延びる限界は低下するものの、77ケルビンの場合でも25%程度延びた。さらに、中性子回折などを用いてステンレス鋼の引っ張り変形の過程やその変形のメカニズムなどを明らかにした。
日刊工業新聞 2024年10月21日
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原子力といえば原子力発電がイメージされますが、燃料電池や自動車エンジンの開発にも貢献する基幹技術です。イノベーション創出に向け、「原子力×異分野」の知の融合を推進する原子力機構の『価値』を紹介します