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セラ触媒材粒子、自己組織化で大きさ・形制御 原子力機構が解明
日本原子力研究開発機構の青柳登研究副主幹らは、セラミックス触媒材料の粒子の大きさと形を制御する仕組みを明らかにした。セラミックス製造プロセスにおいて、ナノ粒子の自己組織化によって大きさや形が決まることを示した。また、表面にできる特殊な薄層の作用で高次構造が作られることが初めて分かった。自己組織化を応用することで、セラミックス材料の新規製造技術の開発につながる。太陽光発電向けナノ多孔膜や剥がれにくい顔料などへの利用も期待される。
排ガス浄化触媒の製造プロセスを調べると、反応初期に直径約3ナノメートル(ナノは10億分の1)の1次粒子が形成されることを発見。数日―数週間置くと勝手に規則的に集まり、直径25ナノメートルほどの複雑な表面を持つ丸い2次粒子となった。さらにこれを滴下乾燥すると、秩序的に配列した高次構造が形成された。
X線や中性子線などで構造解析した結果、2次粒子は自己組織化後に表面の性質が変化し、表面付近に自身の大きさの4分の1程度の薄い正イオン層を伴うことが分かった。この層により2次粒子同士の表面は緩い結合を保つ。適度に凝集・分散した集合体は緩やかに集まり、機能を持った大きな面状やひも状の高次構造となる。
今回見いだした現象はコバルトやジルコニウムなどにも共通し、他のセラミックス材料でも同様の制御が可能と考えられる。東京大学と山形大学、北海道大学との共同研究。
日刊工業新聞 2024年06月17日
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