王子HDは抄紙機1台停機…製紙メーカー、紙需要減少で生産体制見直し
製紙各社が国内で生産体制の見直しを進めている。王子ホールディングス(HD)は2025年3月末をめどに、新聞用紙などグラフィック用紙を生産する王子製紙苫小牧工場(北海道苫小牧市)で抄紙機1台を停機する。日本製紙も25年内に国内2工場の一部設備を止める。デジタル化の流れで紙の需要が縮小する中、生産体制を最適化しコスト削減や生産効率を改善するとともに、成長分野への投資を積極化する。(下氏香菜子)
王子HDはカタログやチラシなどに使われる塗工紙、微塗工紙を生産する王子製紙苫小牧工場の抄紙機「9号マシン」を25年3月末に停機する。年間生産能力は同工場全体の約1割に相当する8万3000トン。現行品目は自社内、他設備への生産移管を進める。
日本製紙は25年9月末をめどに上質紙などを生産する白老工場(北海道白老町)の抄紙機1台を、同年6月末には新聞用紙を生産する八代工場(熊本県八代市)の抄紙機1台をそれぞれ停止する。
白老工場で停機する抄紙機以外の設備については、グラフィック用紙以外の品目の生産拡大を目指す。八代工場については既存の役割を見直し、27年度をめどにトイレットペーパーなど輸出向け家庭紙を生産する計画だ。
このほか三菱製紙も同社高砂工場(兵庫県高砂市)において、圧着はがきやインクジェット用紙などに対応した塗工機1台を9月末に、情報用紙の原紙や特殊紙を生産する抄紙機1台を12月末にそれぞれ停機する予定。いずれも老朽化が進んでおり、高効率設備への生産集約を進める。
製紙各社が生産体制を見直すのは人口減少やデジタル化といった構造的要因を背景に紙の内需が減少しているからだ。日本製紙連合会によると紙の内需は05年以降、毎年減少が続いており、24年は前年比6・6%減の981万3000トンと1000万トンを割る見込み。今後の需要動向によっては「さらに生産体制の再編が進む可能性がある」(製紙会社幹部)。
各社はこうした事業環境の変化を踏まえ、木質由来の素材開発など成長分野に経営資源を集中させる。王子HDは24年末にも、王子製紙米子工場(鳥取県米子市)で紙の製造で使う木材パルプを原料にしたバイオエタノールを生産する実証プラントを稼働。持続可能な航空燃料(SAF)など幅広い分野での採用を目指す。日本製紙も新素材の開発や他社と連携した資源循環戦略を活発化している。厳しい事業環境の中でも攻めの投資で勝ち残りを目指す。