木材由来化学品を収益の柱に…王子HD・レンゴー、バイオ新興と連携で早期事業化
製紙各社がバイオ系スタートアップとの距離を縮めている。王子ホールディングス(HD)は5月に触媒技術に強みを持つグリーンケミカル(神奈川県藤沢市)に出資。レンゴーは3月にBiomaterial in Tokyo(bits、福岡県大野城市)を子会社化した。各社は紙の製造で使う木材由来の化学品を将来の収益の柱にする戦略を描く。有力なバイオモノづくり技術を持つ新興と連携し、早期の事業化につなげる。(下氏香菜子)
王子HDは5月下旬にグリーンケミカルの第三者割当増資を引き受け、同社に出資した。出資額は非公表。グリーンケミカルは独自の触媒技術を使い、木材など非可食のバイオマス由来の糖からバイオプラスチックの一種であるポリエチレンフラノエート(PEF)の原料「フランジカルボン酸(FDCA)」を製造する技術を持つ。
王子HDは自社が手がける木材由来の糖液から多様な化学品の商用化を目指す中、グリーンケミカルが持つ触媒技術に着目。PEFは飲料用ボトルなどへの活用が見込まれており、グリーンケミカルの技術を取り込むことでFDCAの実用化を推進する。
また、レンゴーは3月、持続可能な航空燃料(SAF)向けバイオエタノールの研究開発で協業関係にあったbitsの発行済み株式の60%を取得し子会社化した。同社は廃木材で糖液を作るのに適した酵素の開発・製造ノウハウを持つ。レンゴーはbitsの技術を用いて酵素を内製し、品質・コストの両面でエタノールの競争力を高めたい考えだ。
このほか、日本製紙と大王製紙はそれぞれ微生物を使った発酵技術などに強みを持つグリーンアースインスティテュート(GEI)と協業している。日本製紙は国産木材、大王製紙は古紙を使ったSAF向けエタノールなどの開発を加速する。
デジタル化の進展や新型コロナウイルス感染症を契機とした生活様式の変容で、製紙各社が主力とする紙の需要が減少。今後も大幅な回復は見込めない。各社は有力な新興との連携を強化することで技術開発に反映させ、新事業の創出を加速。既存の事業ポートフォリオの見直しを急ぐ。