「再生エネ」国内唯一のエントリー、きんでん技術者の技能五輪にかける思い
世界の若き匠が持ち前の技能を競う第47回技能五輪国際大会が9月10日―15日にフランスのリヨンで開かれる。隔年開催だが前回はコロナ禍の影響で15カ国の分散開催だった。久々に1国に技能者が集う大会へ「モノづくりニッポン」代表で臨む主な選手を紹介する。
太陽光パネルの設置・配線施工、太陽光・風力発電のメンテナンス、ソフトウエアを用いた発電所の設計―。「再生可能エネルギー」の競技は課題範囲が非常に広い。競技種目としての歴史はまだ浅く、今回は国内ではきんでん以外にエントリーする企業がいなかった。それはこの競技のハードルの高さを如実に示している。
太陽光パネルの設置はミリ単位の位置調整が要求される。その上でパワーコンディショナーとの配線作業には、メーカーごとに異なる機器の特徴を踏まえた冷静な判断力が必要だ。メンテナンス関連では、飛行ロボット(ドローン)操作による太陽光パネルの点検や、意図的に異常が組み込まれた風力タービン模擬装置の点検などが課題となると想定される。きんでんの郡安拓海選手は「機械、電気、油圧制御など、幅広く勉強しないといけない。車やバイクの扱いに近い」と課題の難しさを説明する。
言葉の壁という問題もある。太陽光・風力発電所を設計する課題では、国際大会なので当然、英語版のソフトを使う。ただ現在、同社の業務で使っているのは日本語に対応した別メーカーのソフトのため、先輩社員から直接的な指導を受けづらい。設計に関する考え方などの指導はあるが、ソフトの操作は自力で慣れるしかない。
課題範囲が広いため、各領域を専門とする先輩社員からそれぞれ教えを受ける。指導員の乾優樹さんは、郡安選手を「諦めずに『なぜそうなのか』を突き詰める。メンタルトレーニングの成果を生かし、気持ちを切り替えて適切に対応している」と評する。また木下靖浩人材開発部長は「今回の競技は一工事屋の範疇(はんちゅう)を超えた内容だ。ただその経験が仕事に生きてくるのは間違いない」と語る。今後、再生エネ関連の施工案件が増えると期待される中、複数領域を横断的にマスターしてリーダーシップを執れる人材が必要となるのは言うまでもない。
郡安選手は兵庫県立龍野北高校在学時、高校生ものづくりコンテストや若年者ものづくり競技大会への出場を目指し訓練した。だが当時はコロナ禍で、大会自体が中止になるという苦い経験をしている。それだけに技能五輪にかける思いはひとしおだ。「他部署や社外の方々から教えを受けた。その思いに結果で応えたい」。落ち着いたしゃべり口で熱い闘志をたぎらせる。(大阪・園尾雅之)
【再生可能エネルギー】 太陽光発電と風力発電の設計、施工、運用・保守といった幅広い分野の知識と技能を競う。気象や風況などのデータから効率的なプラントレイアウトを設計できるか、太陽光パネルやパワーコンディショナーの配線を正しくつないで施工できるかなどが問われる。まだ競技としての歴史が浅いため、事前の対策が立てづらい。どんな課題が出されても対応できるように、電気や機械など、領域をまたがってスキルを磨くことが要求される。