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7割は研究者需要のみ…博士人材の活用、企業の本音

7割は研究者需要のみ…博士人材の活用、企業の本音

※イメージ

日刊工業新聞社は研究開発(R&D)アンケート(有効回答219社)を実施した。アンケートでは、博士人材の活躍促進の意向について聞いている。その回答について考察した。

文部科学省は「博士人材活躍プラン」を掲げて博士人材が多様な場で活躍する環境・社会づくりを進める。博士号取得者の3倍増などの供給側の数値目標はあるものの、いかに需要を作り出せるかが肝になる。博士といえば研究者のイメージが強かったが、研究職以外にも博士人材の専門性や国際性、課題解決能力が発揮されることが期待されている。

そこで研究開発職以外で博士人材へのニーズがある部門や職種はあるか問うと、7割の企業が「ない」と答えた。産業界でも“博士=研究者”のイメージが強いことがうかがえる。「ある」と答えた3割の企業に当該部門の人材過不足感を問うと回答企業の6割が人探しに苦労していた。必要な人が採れている企業は3割で、十分な人材の中からより優れた人材を選べている企業は2%しかなかった。

具体的に博士が必要な部門を聞くと、答えは多様だった。「新事業創出やグローバルビジネス推進部門」(ITサービス)、「事業企画やマーケティング部門」(計測機器)、「全社的な技術戦略企画や社内IT企画、知的財産部門」(電機)、「人事やマーケティング、法務、管理部門」(工作機械)、「品質保証や法務、知財部門」(生活用品)、「サステナビリティやDXなどの新部門」(建設)、「情報技術や知的財産部門」(建材)などと全職種に及んでいる。その中でも新事業部門が多く、会社として明るくない分野に進出する際に、専門人材が求められるためと考えられる。人材の不足感とも一致する。

一方、製薬業界は特異で「ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)、データサイエンス部門」や「広報や経営戦略部門」「企画部門やライセンス部門」と全社で博士が活躍していた。新薬開発だけでなく、事業開発や安全性監視もグローバルに進められており、普段から海外チームと働くため博士号が評価されやすい。

既に活躍している博士は多数いる。一部の企業ではマーケティングや法務などの管理部門でも活躍が認知され、会社としても必要性が認識されている。

今後どのような施策や支援があれば博士人材の活用が進むのか、課題や国への要望を聞くと、博士人材とのマッチングの機会増を求める声が最多だった。博士人材の専門性と会社の求める業務がずれた際のミスマッチに苦労した企業が少なくないことが背景にある。文科省はジョブ型インターンシップを推進している。活用が広がるかが注視される。

日刊工業新聞 2024年08月09日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
博士関連の2パートを担当しました。アンケートでは「博士=研究者」が裏付けられた一方で、研究開発職以外でも博士が活躍している会社ではいろんな職種で高度人材が求められていました。高度人材=博士なのか、博士だから活躍しているのかは考えないといけませんが、活躍している博士は社会が認識している以上に存在するのだと思います。この認知度は高めないといけません。ただ博士号のブランドイメージを高めるだけでは効果は限定的で、ちゃんとプライシングしないといけないと思います。専門性や国際性に対して高い値札を付けておかないと、3倍増を達成したら博士がたたき売られるんじゃないかと思います。米国の大学は日本企業が共同研究を持ちかけると、ポスドク何人、このクラスの研究者はいくらいくらと見積もって提示しています。日本では実費のみで受けていたりします。ポスドクのエフォートの半分を企業が買って、新しい技術のポテンシャルを精査したり、知財優先権を獲得したりできるなら、価値に見合った値段を付けても割安だと思います。もし5年、研究期間が確保されるなら若手は時間がかかるテーマに挑戦できます。途中でエフォート分を事業開発や標準化などにシフトしてもいいのかもしれません。インターシップとも違うマッチングの形になるかもしれません。

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