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「半導体材料」再編の中核に、JSR非上場化が問われる意義

「半導体材料」再編の中核に、JSR非上場化が問われる意義

会見したジョンソンJSR社長(左)と池内JICキャピタル社長

まずは構造改革進め自律成長へ

JSR(東京都港区、エリック・ジョンソン最高経営責任者〈CEO〉兼社長)は、産業革新投資機構(JIC)傘下に入り非上場化した。半導体製造の前工程で使う同社の主力材料を中心に、国内同業他社との再編の中核を担う狙いがある。半導体材料には今後も巨額投資が必要な一方、投資が重複する恐れがある。日本勢のグローバルでの競争力を高めたいJICが約9000億円を投じた今回の非上場化の意義が問われ続けることになる。(渋谷拓海)

※自社作成

ジョンソン社長は6月末、JICキャピタル(JICC、東京都港区)と共同で開催した上場廃止後の記者会見で「なぜJICCにアプローチしたのか。それは戦略的パートナーシップ(協力関係)を半導体材料領域で進めることで効率を高め、規模の拡大ができるからだ」と強調した。

JSRの新体制を担う取締役のうち、JSR出身はジョンソン社長のみ。富士フイルムホールディングス(HD)出身の石川隆利氏のほかは、池内省五JICC社長をはじめとするJIC関係者が多い。意思決定を迅速にする狙いだ。

経営方針はJSRとJIC側で一致しているという。市況悪化を受けた半導体材料事業の業績の立て直しとともに、バイオ医薬品事業も強化し、中長期で業界再編をリードする。池内JICC社長は「時間軸としてはまずは構造改革、並行してオーガニックな成長。そして継続的R&D(研究開発)で製品の競争力を上げていく。それから追加(の企業)買収」との見通しを示す。

一般にファンドが一定の成果を出すのに最低でも5―7年が必要とされる。ジョンソン社長も「5―7年後の再上場を目指す」としており、順調にいけば2030年ごろに株式市場に復帰する。池内JICC社長は「再編と再上場のどちらが先かは決めてない。むしろ、そういうことにじっくり取り組めるのが政府系ファンドの利点」と大きく構えている。

JSRは足元では半導体用高純度化学薬品を手がけるヤマナカヒューテック(京都市左京区)の完全子会社化を決めた。ジョンソン社長は再編について「前工程には幅広い選択肢があり、規制もある。どこから実行するか、シナリオとして除外するものはない」と説明する。政府系ファンドのJICが財務面でも強力な後ろ盾となったことで、その他の交渉も徐々に活発になっているようだ。

JSRは半導体回路形成に使うフォトレジスト(感光材)で世界首位級のシェアを握るが、競合のほとんどが日系企業。JICの下で先端ロジックやメモリー向け半導体市場においても、さらなる成長を目指すとしている。国内では中長期の成長や経営の自由度などを求めて株式の非公開化を選択する事例が目立つ。業界再編の大義を掲げた“新生JSR”の戦略が本格化する。


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日刊工業新聞 2024年07月09日

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