カーナビに生成AI活用、パイオニアが実現する性能向上
パイオニアは生成人工知能(AI)を活用し、カーナビゲーションなどの自社製品・サービスの機能や使いやすさの向上に取り組んでいる。これまで音声ナビゲーション機能を持つ車載機器「NP1」や、スマートフォン向けアプリケーションの開発などで培ってきた知見を生かし、さらなる性能向上を図る。
パイオニアは車載機器やスマホ用アプリでの実装を視野に入れ、米マイクロソフトの生成AIサービス「アジュール・オープンAIサービス」を活用した技術検証を進めている。その一例が、運転手とAIとの自然対話を通じて、車を走らせながら詳細な目的地をカーナビで設定する技術だ。
例えば空港のような敷地が広大な施設を目的地に設定するケース。通い慣れた人でない限り、敷地内に複数ある出入り口や建物などをピンポイントで目的地として入力するのは困難が伴う。
こで生成AIの出番。空港に向かう場合であれば、「空港に友人を迎えに行く。その友人はA社の航空便に搭乗している」といった詳細情報を運転手とAIの自然対話の中から導き出し、カーナビのより正確な目的地設定に役立てるという仕組みだ。
現在のカーナビは走行中に運転手と対話しながらの目的地設定はできないが、生成AIを活用することで「ユーザーのあいまいな情報と目的地をつなぐ」(コーポレートR&D部の菅原啓太郎部長)ことが可能になるとみる。スマホ用アプリを活用した技術検証も実施している。
近年、自動車の自動運転技術の進展に伴いAI対応の電子チップが活用されている。自動運転車両の安全・安心な走行を支えるだけでなく、今後は車室内サービスなどでもAI技術の活用が期待されている。
実際、カーナビとドライブレコーダーを組み合わせた車載機器であるNP1にも、自社開発のAIプラットフォームを搭載。音声による操作に対応し、案内も音声で行う。運転手は画面を見たり触ったりする必要がないため、より安全な運転につながる。
さらにNP1ではAI画像解析を活用し、送迎用バス内の子どもの置き去りを検知する機能を付けた特別仕様も用意した。高性能マイクによる音声検知と組み合わせた「二重の仕組み」で置き去りを自動検知し、警報音やスマホのショートメッセージサービス(SMS)で通知する。
運転手とAIとの自然対話は、こうした既存の技術をさらに一歩進めた取り組み。現在はシステムの応答速度や、運転手に提供する情報の正確性の向上に取り組んでいる。VoiceHMIチームの田淵大将氏は「(ナビで提供する情報の)精度は上がっているので、技術をキャッチアップしながら製品に反映したい」と話す。