有機ELの劣化抑える、東京農工大・九大が開発した新技術の意義
東京農工大学の田中正樹助教と九州大学の安達千波矢教授らは、有機ELの劣化抑制技術を開発した。発光層の分極を低減して発光層内に電荷や励起子が蓄積することを防ぐ。電荷や励起子が衝突すると劣化の要因となる。有機ELレーザーなどの開発に向けた基礎的な知見になる。
有機EL発光層に分極した小さな分子を混ぜて発光層の分極を打ち消す。発光層は蒸着時に蛍光分子が一定の方向を向いて自然と分極してしまう。蛍光分子より小さな分極分子を導入すると、膜内でさまざまな方向を向いて膜としての分極を低減できる。
実験では大きさや分極の程度の異なる分子を混ぜて発光ダイオード(LED)の輝度保持時間を評価した。すると小さな分子は発光層分極を低減し、発光強度が長持ちした。
発光層分極で過剰な電荷が蓄積すると、励起子と衝突して失活させてしまう。この際に発光層を劣化させる励起種が生じていた。有機ELディスプレーの高性能化やレーザー開発につながる。
日刊工業新聞 2024年7月24日