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電動車部品で高まる愛知製鋼の競争力、「パワーカード用リードフレーム」生産性35%向上

電動車部品で高まる愛知製鋼の競争力、「パワーカード用リードフレーム」生産性35%向上

パワー半導体を内蔵したカード型パワーモジュールの導電や放熱機能を担うリードフレーム(イメージ)

愛知製鋼電動車向け製品の生産性や品質の向上に取り組み、競争力を高めている。岐阜工場(岐阜県各務原市)で、工程の集約などにより生産性を35%高めたパワーカード用リードフレームの新ラインを立ち上げた。ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の旺盛な需要に応じて供給体制を強化し、2026年度に売上数量で現状比77%増を目指す。(名古屋・増田晴香)

愛知製鋼が岐阜工場と知多工場(愛知県東海市)で生産するリードフレームは、パワー半導体を内蔵したカード型パワーモジュールの導電や放熱機能を担う部品。マイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位の寸法精度を実現するプレス加工技術や、高均質性・高清浄度を確保したメッキ技術の強みを生かしている。

スマート生技製造統括部の西畑克彦部長は、同社製のリードフレームについて「ほぼ全てのトヨタ自動車の電動車に採用されている」と説明。電動車の需要増に確実に応えるため、岐阜工場に約10億円を投じ5月末に新ラインを立ち上げた。

新設した第4ラインは隣接する第3ラインと洗浄装置を共用。また薬品投入も2ライン分を集約した。薬品の温度や濃度、洗浄・乾燥工程の異常や圧力・流量などの管理にデジタル変革(DX)を活用し、省人化や生産性向上につなげた。岐阜・知多両工場の同部品の生産能力を従来比27%増の月760万個に引き上げた。

車載用のリードフレームはメッキ膜厚や表面清浄度など要求品質が高いため、愛知製鋼は継続的な品質向上に注力する。検査工程では独自設計の画像検査装置を導入。0・1ミリメートル単位の傷や、メッキのわずかな光沢差・色素を見分け、不良品の流出を防止する。検査装置1台で5人分の目視検査に相当し、人手不足の課題にも対応する。

岐阜工場の画像検査装置。微細な傷やメッキのわずかな光沢差・色素を見分け不良品流出を防ぐ

電子材料・部品や磁石、センサーなどの製品を展開する同社の「スマートカンパニー」は24年3月期の売上高が199億円で、連結売上高に占める割合は6・7%。同カンパニーの基幹事業であるリードフレームについて、後藤尚英社長は「電動車の普及状況に応じて、さらに能力を増強する必要性が出てくる」と柔軟に対応する方針を示す。


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日刊工業新聞 2024年7月17日

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