大同特殊鋼・山陽特殊製鋼・三菱製鋼…特殊鋼6社の通期見通しの全容
特殊鋼6社の2025年3月期連結業績予想は、5社が増収、4社が営業増益を見込む。建設機械向けは引き続き弱いが、自動車が緩やかに回復するほか、下期から半導体製造装置などの需要回復が見込めるため。物流費や人件費など、コスト上昇分の価格転嫁の浸透が引き続き課題となる。
25年3月期に増収を見込むのは、山陽特殊製鋼を除く5社。大同特殊鋼、山陽特殊製鋼、三菱製鋼、東北特殊鋼の4社が営業増益を予想し、日本高周波鋼業が営業損益で黒字転換を計画する。
大同特殊鋼は25年3月期から国際会計基準(IFRS)を適用し、売上高、営業利益ともに過去最高水準を予想する。清水哲也社長は「下期に半導体の需要が立ち上がるとみている」とし、特に半導体製造装置向けステンレスの増加を期待する。
山陽特殊製鋼は減収営業増益を見込む。宮本勝弘社長は25年3月期の見通しについて「24年3月期は自動車の出荷停止や地震で数量が想定以上に落ちたことが減益に影響したが、これらは正常化してきたので回復するだろう。在庫調整も戻ってくる」と期待する。一方で「中国を中心とした特殊鋼メーカーが安値で中国国内や東南アジア、欧州に進出してきており、事業への影響を懸念している」とした。
愛知製鋼は販売数量が増加し、売上高で過去最高更新を見込むが「足元でスクラップ価格が高止まりしている」(後藤尚英社長)など購入品価格の影響で各利益段階で減益を予想する。原価低減活動などを進め、市況に左右されるスライドギャップといった一過性要因を除いた実力ベースでは前期比で増益を目指す。
三菱製鋼は特殊鋼鋼材事業の需要環境は厳しいものの、販売価格の転嫁が進むほか、バネ事業における精密部品の量産開始などが収益改善に寄与する。日本高周波鋼業は販売数量の確保や物流費、人件費といったコスト上昇分の価格転嫁、原価低減活動を推進する。
24年3月期連結決算は4社が減収、4社が営業減益、1社が営業赤字だった。中国経済の回復遅れで建設機械や産業・工作機械向けの需要が停滞したほか、認証不正を起こしたダイハツ工業の出荷停止により自動車向けが伸び悩んだ。