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経営改善効果は86億円強見込む、バスの完全キャッシュレス化実証

経営改善効果は86億円強見込む、バスの完全キャッシュレス化実証

大阪府南部を走っていた路線バス「金剛バス」は運転手不足や利用者の減少を理由に昨年12月に廃止を余儀なくされた

国土交通省は運転手不足で危機的な状況にあるバスネットワークを少しでも維持するため、10路線程度を選定して2024年秋から完全キャッシュレス(CL)決済バスの実証を行う。現金を取り扱うための管理コストの低減や運転者の負担軽減で、バス会社の経営改善を図る。主要バス会社で完全CL化が実現した場合の改善効果は86億円強を見込む。運転者約1900人分の年収に匹敵し、23年度に不足した運転者約1万人の2割を補える額に相当する。

実証する路線は、利用者が限定される空港や大学・企業輸送路線、外国人や観光客が多い観光路線、生活路線でCL決済比率が高い路線、自動運転実証を同時に行う路線の4種類を公募し、8月までに選定する。利用者への周知期間を経て、11月から25年3月まで実証する。

旅客への案内、想定外の事象の発生、利用者の声、乗降者数や定時制(遅れ具合)への影響、CL以外で支払おうとするケースなどを検証する。バス運転者の高齢化や転職者が増える中、新規入職者を増やすために、CLでどの程度負担が軽減されるかも重要となる。こうした検証結果を踏まえ25年4月以降さらに実証運行を行う。

22年3月に実施した日本バス協会加盟社で30両以上を保有する事業者への調査では、CL導入割合は92・3%、CL決済比率は88・4%。完全CL化への環境は整いつつあるが、高齢者の生活路線などで十分な理解を深めることが必要だ。斉藤鉄夫国交相は「丁寧に制度設計を進めていきたい」としている。

国交省が調べた保有車両30両以上の一般路線バス会社の赤字割合は、19年度が74・4%、コロナ禍の20年度は99・6%、22年度はやや改善したものの87・1%と依然、厳しい状況にある。

日刊工業新聞 2024年7月11日

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