JR東日本が改札技術を刷新、鉄道移動”シームレス”化の行方
クレカタッチ決済・QR実証進む
通勤や通学で多くの人が使う駅の改札が変わり始めた。JR東日本は、改札時の運賃計算を中央コンピューターで行う「センターサーバー方式」を27日に北東北の3エリアから導入する。2次元コード(QRコード)やクレジットカードによる乗車も複数の鉄道会社で始まった。よりシームレスな移動を目指して模索が進む。(梶原洵子)
JR東では新改札システムの導入により、二つの“シームレス”化が期待される。一つは首都圏と仙台など、エリアをまたぐ移動を交通系ICカードの「スイカ」1枚でできるようになること。もう一つは交通と生活サービスの融合だ。具体的なものは未定だが、商業施設の利用で運賃を割り引いたり、鉄道以外の交通や観光チケットをセット購入したりもできるようになる。
高速通信技術の普及に加え、新システムは「連携に必要な複雑な計算ができる」(JR東)ことで可能になった。
改札機で運賃計算を行う従来方法と違い、新システムは改札をタッチした情報をサーバーへ送り、計算結果を改札に戻すが「今と同じ体感で通過できるように開発した」(同)。東京の大規模駅で人がひっきりなしに通る状況も再現して確認したという。
JR東はスイカを共通基盤にシームレスな移動や多様なサービスの提供を目標に置いており、新システム導入は重要な一歩となる。
まず27日に新たにスイカの利用を開始する青森と盛岡、秋田エリアで新システムを導入し、首都圏や仙台、新潟エリアで今夏以降に順次切り替え2026年度末までに完了する。大きなシステム変更のため、第4世代のスイカ改札機への更新と合わせて行う。
スイカなどの交通系ICカードはかなり普及したが、インバウンド(訪日外国人)旅行者の利用は難しい。そこで注目されているのが、クレジットカードのタッチ決済による乗車サービスだ。世界的に急速に広まっており、首都圏では江ノ島電鉄(神奈川県藤沢市)が4月から利用を開始した。東急電鉄も今夏から企画乗車券の販売や改札機の入出場の実証実験を始める。
決済などさまざまな場面で利用が広がるQRコードも改札に使われ始めた。小田急電鉄は鉄道・バスの乗車券と観光施設の割引優待をセットにした「デジタル箱根フリーパス」を対象に、22年3月からQRコードによる改札認証を始めた。JR東も24年度以降にQRコード乗車サービスを順次始める予定だ。東急電鉄はクレカ乗車と合わせてQRコード乗車の実証実験も行う。
鉄道とその他の交通手段、観光、生活サービスなどの決済がつながれば利便性は高まるが、それと同時に複数の乗車方法を両立する改札や駅のデザインが今まで以上に重要となる。乗車方法に応じて異なる改札へ誘導することも必要かもしれない。通勤ラッシュにも対応する速さを維持しつつ、新たな移動サービスへの提供に向けた進化が期待される。