三菱電機が遠隔操作ロボット実証、事業化狙う市場とは?
三菱電機は買い物や観光などを遠隔で行える遠隔操作ロボットの事業化に向け、2024年夏から実証に乗り出す。百貨店や観光施設、学習塾にロボットを導入し各地で実証する。ロボット利用者はアバター(分身)ロボットを通じ、偶発的な出会いなどオンラインサービスとは異なる新たな体験機会を得られる。パートナー企業に有償でロボットやシステムを提供し事業性を検証する。
実証するのは三菱電機と関西大学が共同開発するロボット。スマートフォンで直感的に操作できる点が特徴。例えばアームで物をつかむ際は、力の入れ具合を映像で表現する。専用インターフェースを使う遠隔操作ロボットに比べて操作に習熟しやすく、子どもでも扱える利点がある。
百貨店ではロボットを使った買い物を実施。観光施設では観覧に加え、特産物や展示品に遠隔で触れられるようにする。学習塾では体験学習を行う。パートナー企業への導入時期など詳細は今後詰める。25年度の事業化を目指す。
電子商取引(EC)による買い物や、映像による疑似的な観光体験などの従来サービスに対し、ロボットを使えば「身体的・物理的な境界を超えた新しい体験をユーザーに届けられる。偶発的な出会いを得たり、新たな視点の世界に気づくきっかけになったりする」と、三菱電機先端技術総合研究所の春名正樹主席技師長は説明する。
同社は23年に遠隔操作ロボットの事業化を目指すプロジェクトグループを発足した。約10人のメンバーがロボットや操作インターフェース、通信システムの構築を進める。誰でも簡単に操作できる点を訴求し、教育分野など約100の事業者に導入を提案してきた。「農業や製造業はレッドオーシャン(過当競争)なので、環境保全や教育などのニッチだが伸びる市場を狙う」(春名主席技師長)という。
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日刊工業新聞 2024年7月10日