座席にスピーカー機能、パイオニア・独レカロが開発した振動子内蔵シートの音響
パイオニアは独レカロと振動子内蔵シート「RCS Sound edition」を共同開発した。レカロが10月1日に発売する。シート背面下部に二つの振動子を内蔵。既存のオーディオシステムと組み合わせて使用する。シート全体から音が出るため、身長や運転姿勢を問わず車室内空間全体を包みこむような安定した音を届ける。消費税抜きの希望小売価格は19万5000円。全国のレカロ販売店などで取り扱う予定で、年間500台の販売を目指す。
新製品はレカロのシート「RCS」を使用した。ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を活用し、背もたれが固定され座面と一体成形になっている「フルバケットシート」で、通常はレース車両やスポーツ走行に使用される。人間工学を応用した設計により、長時間走行しても身体に負担が少なく乗り降りしやすい形状になっている。
振動子を内蔵した新製品のシートは継ぎ目がなく広い面積を持つフルバケットシートの特徴を生かして、効率良く音を変換し、シート全体がスピーカーの役割を果たす。ボーカルが自分の耳元で歌っているかのようにしっかりと音が届くため、オープンカー運転時は風の影響を受けにくく、高速道路やトンネル走行時などの聞こえにくさも抑えられる。またヘッドレスト内蔵のスピーカーと比べ、ユーザーの身長や動きに対応でき、ハンズフリー通話も可能とする。
サウンドは低音域を抑え、中高音域に特化。長時間聞いていても疲れにくく、音の広がりを感じて楽しめるように工夫した。純正のサウンドシステムや市販のナビゲーションに後付けができる。
両社は2022年から開発に着手。パイオニアスピーカー技術統括部第二商品技術部モビリティ技術課の根岸孝之課長は「スピーカーの見た目ではないものから音が出ることが驚きだと思う。スピーカーの機能を残したままシートをアップグレードでき、音場も豊かになる点で差別化できる技術になる」と語る。レカロ営業グループの南善樹AM営業部長は「今のものに付け加えることで、より良いものを顧客に提供していく。多くの人に体験してもらいたい」と期待する。