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食品機械で攻勢かけるソディック、植物肉にも参入の狙い

食品機械で攻勢かけるソディック、植物肉にも参入の狙い

ソディックの無菌包装米を製造するラインの一部(炊飯装置)

ソディックは食品機械事業で攻勢をかける。主力の製麺機や米飯製造装置でアジアを中心に営業体制を強化する。小麦を原料に動物性食品を再現した肉様食品「プラントベースフード(PBF)」市場に参入し、機械以外の新たな分野の開拓にも乗り出した。2026年12月期に食品機械事業の売上高を23年12月期比59・4%増の110億円、営業利益を同62・5%増の13億円に引き上げ、業績の安定化につなげる。(編集委員・西沢亮)

ソディックの食品機械事業の売上高

「食品機械事業をさらに伸ばすためには、海外販売の拡大が必要になる」。ソディックの古川健一社長は2日、同事業の説明会でこう強調した。

その一環で加賀事業所(石川県加賀市)に食品機械事業の海外営業を担う部門を設立。専任の担当者を配置し、アジアや米国などの海外展示会への出展を積極化する。併せて中国や韓国などでメンテナンス担当者を拡充し、強みのサービスにも磨きをかける。

1月までに韓国食品大手のHARIM(ハリム)グループから米飯製造システムで約20億円の大型案件を受注。従来の無菌包装米飯製造工程に、レトルト釜による加圧加熱殺菌工程を加えた業界初の「ハイブリッド殺菌方式」のシステムで、25年に韓国の同社工場で稼働予定。ソディックはコメが主食の中華圏やアジアの米飯製造装置の潜在的な市場規模が日本の5倍程度と推測する。同社の神野久彦執行役員は「既存の装置の品質をさらに向上し、シェアを上げていきたい」と意欲を示す。

生産面では23年に中国と日本で食品機械の工場棟を新設し、供給体制も強化。特に日本の既存工場では100メートル程度の米飯製造ラインをすべて並べられず、組み立てや調整で協力会社と連携していた。新工場では顧客の工場にラインを据え付ける前に動作確認などが可能になり、「据え付けにかかる工数や手離れが良くなり、利益が出せるようになった」(中村卓弘食品機械事業部副事業部長)。

新規分野では肉様PBF「フラカルネ」を商品化した。無菌包装米飯製造システムで培った殺菌技術などを応用。小麦由来のタンパク質を一体化して成形する特殊加熱装置を開発し、肉本来の柔らかさなどを再現した。6月から飲食業者などへの営業を開始。今後は欧米市場にも輸出し、28年12月期に売上高20億円を計画する。神野執行役員は「食品機械は8―10年に1回しか売れず変動があるが、食品は毎日売れる。経営も安定するので積極的に取り組みたい」と話す。

ソディックは中国経済の低迷などを受け、主力の放電加工機や射出成形機の販売が大幅に減少。23年12月期の当期損益が46億円の赤字(22年12月期は60億円の黒字)に陥った。古川社長は07年の食品機械事業参入の狙いについて「(工作機械などと異なり)設備投資の動向や景気変動に左右されにくく、業績安定のためだった」と振り返る。外部要因に影響されない収益基盤構築のためにも、同事業の成長が期待される。

日刊工業新聞 2024年07月08日

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