日産は一部工場閉鎖・ホンダは人員削減計画、日系車メーカーに迫られる中国戦略練り直し
日本の自動車メーカー各社が中国戦略の練り直しを迫られている。日産自動車は一部工場を閉鎖し、ホンダは人員削減を計画する。三菱自動車はすでに市場から撤退した。現地の自動車メーカーが新エネルギー車(NEV)で台頭する中、日系メーカーは販売が苦戦している。競争力を磨き、どう難局を乗り越えるか。(編集委員・村上毅)
6月、日産は中国江蘇省常州市にある工場を閉鎖した。2020年に稼働したばかりの最新鋭工場だった。生産能力は年間約13万台で中国全体の約1割を占めるが、閉鎖により能力の適正化を図る。
他社も同様に戦略転換を余儀なくされている。ホンダは5月、中国合弁子会社の広汽ホンダ(広東省広州市)で希望退職の募集を開始。三菱自は23年に現地企業との合弁を解消し、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場に軸足をシフトする。
日系メーカーの苦戦の背景には電気自動車(EV)をはじめとするNEVの拡大がある。中国政府の支援もあり、23年のNEV販売台数は前年比37・9%増の949万5000台と大幅に増加し、全体の3割超を占めるまで成長した。
ガソリン車中心の日系メーカーは競争力のあるNEVに乏しく、販売は低迷している。調査会社のマークラインズによると、19年に456万7600台あった日系メーカーの販売台数は23年には382万9000台に減少。シェアは21・3%から14・7%に低下し、24年1―5月累計では12・4%まで縮小している。
供給過剰が正常化せず、価格競争の激化で自動車のデフレ化が進む。体力勝負の様相となり、日系メーカーにとって「しのぐ年が数年続く」(宮崎洋一トヨタ自動車副社長)状況だ。
東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「日系メーカーが2―3年前に思い描いていた状況からはかけ離れている。市場が伸びないことを前提に戦略を見直す時期に来ている」と指摘する。市場に見合った構造改革が必須であり、それが難しければ撤退も有力な選択肢に浮上する。
起死回生の策は何か。ナカニシ自動車産業リサーチ(東京都港区)の中西孝樹代表アナリストは「(対策は)中国で売れる商品開発力とコスト競争力。中国式のクルマづくりを学ぶ時だ」と強調する。
日系メーカーは巻き返しに向け、24年後半から25年にかけて次世代NEVを投入する。さらに4月にはトヨタが中国IT大手の騰訊(テンセント)と連携強化を発表。先進安全技術やマルチメディアなど車の知能化分野で協力する。中国企業はソフトウエア定義車両(SDV)や人工知能(AI)で先行しており、IT分野での協業がカギになりそうだ。
中国の自動車メーカーとは中国市場だけでなく、今後世界で戦う時代が来る。中国における競争力の強化が、日本メーカー各社の将来の命運を左右することになる。
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