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トヨタ紡織が市場投入へ…水素燃料型アシスト自転車の実力値

トヨタ紡織が市場投入へ…水素燃料型アシスト自転車の実力値

スポーツバイク向けを想定してFCアシスト自転車の開発を進める

燃料電池(FC)技術を活用し水素を身近に―。トヨタ紡織は環境負荷の低い水素を燃料とするアシスト自転車を開発した。FC部品のコア技術や熱循環の仕組みを採用し、自転車に搭載できる小型システムを実現した。長距離走行、長寿命、充填時間の短縮などで一般的なバッテリータイプとの差別化を図る。2024年度内に自治体と実証実験を進め、30年の市場投入を狙う。(名古屋・増田晴香)

トヨタ紡織はトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に搭載されている電動化製品として、FCのセパレーターやイオン交換器、エアクリーナーなどを手がける。チタン材を精密プレス加工し複雑な微細流路を実現したセパレーターなどFC部品の強みを自動車以外にも展開している。

開発したアシスト自転車は、1メガパスカル(メガは100万)未満で取り扱い免許が要らない小型の低圧水素タンクを採用。FCスタックと、ナノ繊維技術による自前のリチウムイオン電池(LiB)を組み合わせた。上り坂やこぎ出しでは瞬発力を出せるLiBが補助する。

水素を出し続けると冷える水素タンクと、発電の際に熱を発するFCスタックの間で水を循環させ、ラジエーターやヒーターが不要なムダのない熱マネジメントを実現。システム全体のコンパクト化につなげた。

ミライに採用されたエアクリーナーを自転車にも搭載し、長寿命である点を訴求できるほか、水素は長距離・長時間稼働に優位性があると期待する。現時点でアシスト走行距離は30キロ―50キロメートル。充填時間が約20分と短いこともメリットで「動かない時間を最小限にできる」(トヨタ紡織電動製品開発部の平田和之部長)。

これらの特徴を生かし、走りを1日中楽しめるスポーツバイク向けを想定して開発を進めている。また「配達用の3輪モビリティーや配膳ロボットなどにも活用できるのでは」(同)と幅広いモビリティーへの同システム搭載を期待する。

24年秋に自治体との実証実験を予定。さまざまな乗り方でシステムへの負荷を検証しながら市場投入に向けて需要を把握する。観光プランと組み合わせた実証も検討している。


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日刊工業新聞 2024年6月19日

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