グリーンケミカル事業化へ、日揮と旭化成が実証設備
日揮ホールディングス(HD)と旭化成は今秋にも、再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術の実証プラント建設に着手する。福島県の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R、福島県浪江町)において、アルカリ水電解装置で製造する水素を原料にアンモニアを製造する計画。2024年度に実証プラントを稼働。その後は国内外で実用プラントを設置してグリーンケミカルの事業化を目指す。(いわき・駒橋徐)
日揮HDはグリーンケミカルプラントの設計・調達・建設(EPC)事業、旭化成は再生エネの電力などを用いたアルカリ水電解装置による水素供給事業の展開を狙う。
実証プラント建設は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション(GI)基金の支援を受けたプロジェクト。旭化成が納入したFH2Rの水電解装置の水素を原料とするプラントを日揮HDが建設し、日量4トンのアンモニアを合成する。26年度まで実証し製造技術を確立する。
再生エネなど不安定電源によるグリーンアンモニアの製造では、水素からのアンモニア合成の最適化が課題。今回のプラントでは、再生エネ由来の電力を用いた水電解装置で水素を生成する一方、アンモニア合成プラントは一定の負荷ではなく変動運転する。
両社は年間を通し、負荷が変動して運転しても水素の貯蔵量を確保する統合制御マネジメントシステムを開発。設備全体を最適化した運転の実現を目指す。日揮HDはグリーンアンモニアの合成技術やシステムをEPC事業で海外展開する構えだ。
第2段階としては27年から30年まで、旭化成を主体にメタノールも対象にした大規模ケミカルプラントを国内外で実証する。水電解装置の規模は4万キロワット、水素を1日当たり17トン、アンモニアを同100トン製造。アルカリ水電解による水素製造、二酸化炭素(CO2)の分離・回収、バイオ&グリーンケミカルを柱にした国内外でのプロジェクトで、事業化の水電解システムの規模は100万キロワットを想定する。
このため旭化成は、川崎製造所(川崎市川崎区)にFH2Rのプラントのノウハウを活用したアルカリ水電解水素製造装置のパイロット試験設備を建設中で、23年度末に完成予定。
1モジュールが運転できなくても他のモジュールで水素を最適供給できるよう複数モジュールを制御し、再生エネ由来の不安定な変動電源にも対応できるシステムとなる。
同社では川崎の設備について25年に事業化する予定だ。FH2Rと川崎のパイロット試験設備をベースに、国内外で1件数万キロワット規模の水電解装置の納入を目指す。
旭化成の植竹伸子上席執行役員は「グリーンケミカルによってCO2削減への貢献が求められる時代がきている」としている。今後、必要な技術を実用化して水素を燃料、化学原料に活用する方針。
FH2Rとパイロット設備をベースに、1件数万キロワット規模の水電解装置でグリーンケミカルを複数企業とコンソーシアムを組むことなどによりグローバル展開していく。
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