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主力の紙需要は停滞も…製紙6社の通期見通し、全社が営業増益の理由

製紙6社の2025年3月期通期業績予想が15日出そろい、全社が増収営業増益を見込む。主力の紙・板紙の需要は引き続き停滞するものの、人件費や物流費の高騰を背景とした製品価格の値上げが利益を押し上げる。

※自社作成

王子ホールディングス(HD)は東南アジアなどで段ボールなどの販売数量が増えるほか、木材パルプの販売価格が前期より上昇するなど海外事業が利益にプラスに寄与。

レンゴーは段ボール製品の値上げや海外関連事業の拡大により、増益を見込む。

日本製紙は豪Opal社の構造改革効果による海外事業の収益改善が増益要因となる。

大王製紙は海外事業が78億円の増益要因になると見込む。前期に落ち込んだ主戦場の中国事業が回復するためで、品川舟平取締役常務執行役員は中国事業について「品質と価格のバランスやZ世代(90年代半ばから2010年序盤生まれの年齢層)向けの戦略を着実に実行し、回復基調にある。25年度には黒字化を目指す」と述べた。

三菱製紙はコスト削減効果が増益に寄与する。

製紙各社は今後、主力の紙・板紙の需要減をカバーする成長分野を育て、事業構造の転換による持続的成長を目指す。王子HDは完全子会社化したフィンランドのワルキが持つ技術を生かし、国内外で包装資材事業を拡大する。

日本製紙は木材パルプを使ったセルロースナノファイバーなど新素材の開発を推進。瀬邊明執行役員は「28年度をめどに事業化したい」とした。

24年3月期連結決算の営業利益は、レンゴーと三菱製紙が増益、日本製紙と大王製紙が黒字転換、王子HDと北越コーポレーションが営業減益だった。レンゴーは値上げが浸透し、売上高、各利益項目で過去最高だった。

日刊工業新聞 2024年05月16日

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