製造コスト50分の1も…湘南工大、GAA技術活用した「AI半導体回路」設計
湘南工科大学の渡辺重佳名誉教授・学事顧問は、ゲートオールアラウンド(GAA)技術を使った人工知能(AI)半導体回路を設計した。GAAトランジスタを積層し並列化してAI処理に必要な積和演算を実行する。まだ基礎的な設計段階だが、平面型に比べて12分の1から50分の1に製造コストを削減できる可能性がある。
チャネルの4面すべてをゲート電極で包むGAAトランジスタを並列化しAI処理に利用する。AI処理では大量のかけ算と足し算を繰り返す。かけ算はGAAトランジスタを電流が通る際の抵抗値として、足し算は積層方向にトランジスタの電流値を足し合わせて出力する。
積層すると面積を大幅に削減できコストが下がる。ただ配線を伝った誤書き込みや大きな漏れ電流が生じる課題が生じる。
そこで1段上のトランジスタと接続する斜め配線を考案した。トランジスタの接続限界は32―64個だったが、漏れ電流の制約がなくなる。
斜めに配線するためには、その前後を分けて成膜し積んでいくため製造工程は2倍に増える。それでも面積が小さくなる方がコスト低減には効果がある。256段トランジスタを積層すると12・5分の1に、1024段積層すると50分の1になると試算する。斜め配線を作らなければ、さらに半分になる。
線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)ルールで1000段積んだAI回路は単純計算で1センチメートル四方に1京2500兆個のトランジスタが載る。巨大なAIモデルのパラメーター数よりも大きくなる。
現在は回路を設計してコスト優位性を試算した段階。実際に実現可能か今後検証を進めていく。
日刊工業新聞 2024年05月20日