省エネ・脱炭素で存在感…コージェネ・燃料電池がもたらす効果
水素活用カギ 技術開発進む
コージェネレーション(熱電併給)や燃料電池(FC)の利活用が加速している。国のエネルギー統計によると、コージェネの国内の累積導入発電容量は1366万キロワット(2023年3月末)に到達した。FCも総合効率最大80%台という省エネルギー性の高さから家庭用、業務用で導入が進む。今後は水素ガスエンジン、ガスタービンコージェネ機器により脱炭素のエネルギー供給を実現。カーボン排出ゼロの高効率なコージェネシステムが工場やビル、家庭に導入され、電力の調整電源としても利用される見込みだ。(いわき・駒橋徐)
コージェネは電力の調整や仮想発電所(VPP)の普及が進む中で重要な役割を果たす。国の第6次エネルギー基本計画では、30年にコージェネの年間発電量が798億キロワット時と発電量の8%を見込む。毎年約20万キロワット増加し、累積導入発電容量は産業用が1086万キロワット、民生用が280万キロワット。核となるガスエンジンは出力1万キロワット程度まで実用化され、発電効率は26―51%。ガスタービンは同5万5000キロワットまであり、発電効率が17―40%、総合効率は70―86%と高い。
都市再開発で大型コージェネの導入が進む。東京都は日本橋付近の地域冷暖房システムで出力7800キロワットのガスエンジン3基が熱電併給する。虎ノ門エリアでも再開発に伴い出力1000キロワットと同2000キロワットのガスエンジンがそれぞれ2基設置された。
宇都宮市では工業団地に出力5770キロワットのガスエンジン6基とボイラ、太陽光発電を導入。電力自営線と熱導管を敷き、複数の工場にエネルギー供給する。また信越化学工業は群馬事業所でガスタービンコージェネシステムを増設。2工場にコージェネを導入して両工場間に共同溝を設け、蒸気配管での熱融通により熱電をバランスさせ電力自給率100%を実現している。
一方、家庭用FC「エネファーム」の普及台数はメーカー出荷ベースで51万台。東京五輪・パラリンピックの選手村に建設された約4000戸の分譲マンション住宅に700ワットのFCを設置。業務用水素FCも100キロワット1台と5キロワット24台が導入された。
コージェネの燃料は水素合成のeメタンがターゲットになる。カーボンゼロ燃料としてガス会社が30年に天然ガスの1%、50年に90%に拡充することを目指しており30年代にはコージェネで天然ガスとeメタンをミックスし実用化していく。
水素ガスタービン、水素ガスエンジンのコージェネへの導入では、ガスタービンがまず水素混焼で産業用での開発が進む。出力7000キロワット級は30%までの混焼が製品化され、同1000キロワット級は水素専焼が事業化に入っている。排熱ボイラ追焚きバーナーも30%混焼まで製品化が可能だ。ガスエンジンも同450キロワット機で35%混焼の試験運転に成功した。
コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)の柏木孝夫理事長は「コージェネによるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現には、省エネで低炭素化を実現し、グリーン水素などで燃料の脱炭素化をすることがキーテクノロジー」とする。カーボンゼロのバイオマスコージェネも11年から導入が増加している。再生可能エネルギーが拡大していく中、コージェネは「出力調整を柔軟に行える調整用電源としての価値が高い。系統の周波数が変動した時にも耐えられ、系統安定化に貢献できる」(柏木理事長)。エネルギーの強靱(きょうじん)化にも貢献する。
今後は水素やeメタンなどの脱炭素燃料を有効に活用する省エネアイテムとしてコージェネは重要な役割を果たす。「今はその移行期であり、天然ガス火力などの大規模電源と中・小型の分散電源が共存する時代はコージェネが大きな役割を担う」(同)としている。