切り札はリチウム電池・水素、建設機械の脱炭素加速
建設機械業界で、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に対応する動きが加速している。ボルボ・グループ・ジャパン(東京都港区、ヨハン・ハーバーツ代表)は22日、20トン級のリチウムイオン電池(LiB)油圧ショベルを日本市場向けに発売したと発表した。またコベルコ建機は親会社の神戸製鋼所の高砂製作所(兵庫県高砂市)に水素供給・稼働評価の環境を2024年度中に整備し、研究を加速させると発表した。世界的な脱炭素化の流れを受け、各社の動きが活発化している。 (編集委員・嶋田歩)
ボルボ・グループ・ジャパンは23年に日本市場向けに2トン級の電動商品2機種を発売済みで、今回投入した20トン級の「EC230エレクトリック」は3機種目。バッテリー容量264キロワット時、電圧は600ボルト。急速充電装置で約1・5時間充電して約5時間稼働できる。
掘削リーチや吊り上げ能力はディーゼルエンジン機種と同等。日本市場についてアジア担当のアム・ムラリドハラン氏は「電動化の機運が目に見えて高まっている」と手応えを示す。代表例として、国土交通省によるグリーン・トランスフォーメーション(GX)建機の認定制度を挙げ、「スピード感を持って環境対応に取り組んでおり、成長が見込める」と期待する。
LiBと並び、排ガス対策の切り札とされるのが水素燃料電池だ。
コベルコ建機は13トン級の水素燃料電池ショベルの試作機を23年3月に開発し、広島事業所内で実証を進めていたが、燃料の水素供給インフラが整っていないため2時間程度の実証にとどまっていた。そのため、高砂製作所の設備を使って神鋼グループ全体で取り組みを加速する。コベルコ建機はエンジニアの中途採用も、24年度は23年度実績比2倍以上の64人を計画。即戦力効果を期待する。
またコマツや住友建機も、それぞれ電動化やカーボンニュートラル対応の研究を強化している。
ただLiBも水素燃料電池も現状ではまだまだ、高価格の問題や充電インフラ、水素の貯蔵、運搬手段に課題を残す。日立建機はこの点を見越し、九州電力と共同で施工現場での可搬式充電設備の開発を進めている。建機向けの充電設備はパワーが大きい分、充電時間も長くかかるため電圧の規制緩和の問題もあり、官民挙げた取り組みが期待される。
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