いすゞは減収減益見込む…国内商用車2社、2025年3月期の焦点
いすゞ自動車、日野自動車の国内商用車2社の2025年3月期は、両社にとって主要市場であるアジア市場の動向が焦点になる。前期に売上高と全ての利益段階で過去最高を更新したいすゞ。ただ、25年3月期はタイのピックアップトラック(LCV)の需要減などを踏まえ減収減益を見込む。日野自もインドネシアやタイを中心とした海外販売台数でマイナスを予想する。為替相場の乱高下など不透明要素もある中、踊り場を迎える。
いすゞは販売シェア首位を握るタイのLCVの25年3月期の販売が前期比約3割減の9万台にとどまる見通しだ。南真介社長は「需要が多い時期に比べて半減している。異常な状況だ」と吐露。しかし「市場は冷え込んでいない。金利の上昇で主要顧客である中小事業者が与信を受けられていないものの、今後いくつかの経済対策が出てくるだろう」とし、25年3月期の後半にかけて徐々に需要が回復する見通しを示す。
海外商用車(CV)事業も足元は厳しい。中国や北米向けが減少し、25年3月期は同4・2%減の22万6000台を予想する。
ただ、あくまで主要市場の落ち込みは一時的なものとして、27年3月期の売上高で24年3月期比18・1%増の4兆円、営業利益では同22・8%増の3600億円の目標を掲げた。新車型が出そろう日本、電気自動車(EV)小型トラック投入やアフターサービスの充実を計画する北米市場で稼ぎ、安定的な収益につなげる。
一方の日野自は保有資産売却などで前期に4期連続の当期赤字こそ免れたものの、販売台数はインドネシアが同19・9%減、タイが同19・6%減と、ともに約2割の落ち込みとなった。エンジン認証不正の影響も色濃く残り、米司法省の調査が継続中であることなどを理由に25年3月期の当期損益予想は未定とした。
中野靖最高財務責任者(CFO)は「インドネシア大統領選が実質的に終了し、現政権の方針が引き継がれそうだ。24年度後半から市場は回復するとみるが、現時点で当社の見通しには織り込んでいない」と説明する。中国景気の影響を受けやすいタイの方が「回復に時間がかかる想定」(中野CFO)だ。
いすゞ、日野自ともに主力のアジア市場が伸び悩む一方、25年3月期の日本国内の販売台数は増加の見通しだ。半導体不足や架装メーカーの能力不足に起因する生産制約の状態が改善する。
ただ、その国内市場も、トラック運転手の時間外労働時間の上限規制が適用される「物流の2024年問題」などを踏まえると、旺盛な需要が続くとは見通しづらい。自動運転技術やコネクテッド(つながる車)対応など、車両販売台数以外の部分で安定的に稼ぐ事業モデルの確立・育成も求められる。