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いすゞ・UD、統合から3年…シナジー効果創出、今年度330億円の中身

いすゞ・UD、統合から3年…シナジー効果創出、今年度330億円の中身

いすゞとUDが共同開発したトラクターヘッド(いすゞ「ギガ」<左>とUD「クオン」)

いすゞ自動車がUDトラックスを買収してからまもなく3年。補修部品倉庫の共通化やインドネシアの工場集約、日本の販売金融一本化、製品共同開発など連携が進む。両社は統合効果として23年度に330億円、25年度に500億円のシナジー創出目標を掲げ、確実に歩みを進める。一方、UD買収とセットで発表されたスウェーデンのボルボ・グループとの戦略提携の成果は見えない。世界を俯瞰(ふかん)した提携の果実が求められる。 (大原佑美子)

物流/倉庫集約、コスト削減

ドバイにあるいすゞの補修部品倉庫。22年3月にUDの倉庫を移転・集約した

いすゞは20年10月、ボルボと商用車分野における戦略的提携を締結。21年4月に当時ボルボの傘下だったUDの事業を取得した。いすゞとUDは開発費の節減、資材・物流費におけるスケールメリットの享受、営業面での協業といった取り組みを積み上げ、23年度の統合効果は合計約130億円を見込む。ここにUDの23年度のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)として200億円程度が加わる見通しだ。

物流面では22年3月、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるいすゞの倉庫に、UDの部品倉庫を移転した。同倉庫はサウジアラビアなど中近東向けの補修部品の供給を担う。拠点集約により賃借料の削減に加え、同一仕向け地への部品の共同輸送で物流費の削減につなげた。米国もペンシルベニア州のいすゞ倉庫に集約。UDは12年に米国の新車販売から撤退し、アフターセールスのみを行っていた。海外の他の主要拠点でも倉庫集約に向け検討が進む。

営業/販売金融など一本化

日本国内では営業面で統合効果が出ている。いすゞグループとして販売金融や中古車オークションの一本化を開始。23年4月に投入した共同開発のトラクターヘッド販売は「“堅調”を上回る“好調”」(柴崎徹UDトラックス国内営業部門車両営業本部統括常務)なほか、小型・中型トラックのグループ内でのOEM(相手先ブランド)調達への切り替えなどが効く。

一方、共通のプラットフォーム開発に着手していた大型トラックのフルモデルチェンジは、当初目指した25年から27年以降にずれ込む見通しだ。欧州委員会が提案した自動車の新たな環境規制「ユーロ7」や競合の再編動向などを踏まえタイミングや仕様を決める。

いすゞの山北文也企画・財務部門バイスプレジデント(VP)は24年2月の決算会見で、24年度以降のUDとの統合効果について「販売拠点統合による間接費用の削減などを見込んでおり、積み上げていける」と強調。今後、いすゞグループのグローバル戦略を描く上で、ボルボとの連携の目的である電動化などの技術開発や、大型トラックのプラットフォーム共同開発などに取り組み、成果を出す必要がある。

業界再編が進む中、連携によるスケールメリットを最大化し、グループの潜在能力を高められるかが問われる。

日刊工業新聞 2024年03月21日

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