キオクシアが第10世代から採用、新エッチング技術の優位性
キオクシアは早ければ2026年にも量産を計画する第10世代NAND型フラッシュメモリーについて、従来よりも低温でエッチングする最新製造技術「クライオエッチング」を採用する方針だ。メモリーセルの上層から下層を貫く多数の穴「メモリーホール」の形成時間が従来より早まり、スループット(時間当たりの処理能力)の向上につながる。韓国サムスン電子など競合も導入を検討しているとされる中、キオクシアは最新技術を導入して生産性を高め、海外勢を追撃する。
メモリーセルを積み重ねる3次元(3D)NANDでは、積層数が増えるにつれ、メモリーホールの形成が難しくなる。メモリーホール形成に時間がかかることから、スループットの悪化につながる。
新しい製造技術であるクライオエッチングはガスの種類を変更するとともに、相対的に低い温度(マイナス50度Cより低い温度)でエッチングする。従来のプラズマエッチングと比べ、加工速度は4倍ほど高まるとされる。
NAND向けのエッチング装置は米ラムリサーチが独占する状況だが、クライオエッチングの研究開発では東京エレクトロンが先行する。東京エレクトロンは、すでに複数社において装置の顧客評価を進めている。同社は生産性などの観点から、積層数が400層を超える世代から優位性を示せるとしている。
NANDはメモリーセルを縦方向に積み上げ、単位面積当たりのメモリーセルを増やす形で進化してきた。キオクシアの競合である韓国のサムスン電子やSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーなどはメモリーセルを多く積層することで性能を高めてきた。
一方、キオクシアは単純に積層数を増やすのではなく、チップ面積を縮小させながら積層する方法を採用。性能を向上させながら、積層数を抑えることで製造コストを低減する方針を取ってきた。
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