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ドコモ・KDDI・ソフトバンク…全社が増収営業増益、自社経済圏の競争激化

携帯通信3社の2025年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、全社が増収営業増益となる見通しだ。21年以降の携帯通信料金引き下げで減少傾向にあったARPU(利用者1人当たりの平均月間収入)が底打ちし、反転し始めた。この流れを確実にするためにはスマートフォンをハブ(結節点)にした非通信事業の強化が欠かせない。生成人工知能(AI)の活用、他業種との連携による自社経済圏の付加価値向上に向けた競争がより激化しそうだ。

※自社作成

「通信にデータドリブンと生成AIを加えた核に、通信基盤に利点がある付加価値をセットし、ID数を増やす」―。KDDIの高橋誠社長は今後の成長戦略をこう示す。

KDDIの24年3月期の総合ARPUは5200円と前期を40円上回った。このうち通信ARPUは同20円減の3950円だったが、付加価値ARPUが同60円増の1250円に増えたからだ。この付加価値向上の武器となるのが、50%の出資を決めたローソンとの連携拡大となる。

KDDIが今後4年間で1000億円規模の投資を計画する生成AI開発向け大規模計算資源、25年3月末までに4900万回線の達成を目指すIoT(モノのインターネット)基盤を用いたデータ分析で新たな付加価値を生み出す。

ソフトバンクも消費者向け携帯通信事業の営業利益について「23年3月期を底に反転を目指すとしてきたが、24年3月期に上方修正して目標を達成できた」と述べ、携帯事業環境の改善に手応えを示した。

同社も次の成長投資に向けAI計算基盤に約1500億円を投じる。「今後の成長のために、グループ経済の魅力を引き上げ、競争力を高める」(宮川潤一ソフトバンク社長)考えだ。

NTTドコモは25年3月期の携帯通信ARPUを前期比30円減の3950円と予想した。「通信サービス収入減は継続するが、金融などの成長分野の拡大、顧客体験の向上による事業の成長を進める」(井伊基之社長)。7月には非通信サービスを担うスマートライフカンパニーと営業本部を一体化した「コンシューマサービスカンパニー」を新設する。顧客接点を最適化し、非通信事業を含めた総合ARPUの増加を目指す。

日刊工業新聞 2024年05月14日

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