市場縮小傾向の事務機器…業界再編の動き高まる、コニカミノルタと富士フイルムBIが連携へ
事務機器(OA)業界の再編に向けた動きが高まっている。コニカミノルタと富士フイルムビジネスイノベーション(BI)が、複合機やプリンター分野で業務提携に向けた協議に乗り出した。コロナ禍で定着したリモートワークや在宅勤務、それに伴うペーパーレス化の加速などを背景にOA市場は縮小傾向にある。リコーと東芝テックも協業を進めており、OA各社の生き残りをかけた模索が続きそうだ。(新庄悠)
コニカミノルタ・富士フイルムBI 原材料・部材調達で連携
「当然の成り行き。今後、業界再編はさらに進むだろう」。印刷関連機器を手がける中小企業トップは、コニカミノルタと富士フイルムBIの動きをこう受け止める。一方で、ある複合機メーカーやトナー素材を手がける化学メーカーは「この2社が提携に向かうとは意外だった」と明かす。
ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)によると、2023年の複写機・複合機の出荷額は前年比3・5%減の8076億円だった。コロナ禍の落ち込みからは脱したものの、18―19年の水準には届いていない。07年の1兆590億円を最後に、それ以降は1兆円を割り込み、縮小傾向が続く。
こうした状況の中、各社は医療分野やITソリューションなどで事業の多角化を進める。コニカミノルタは新たな成長の柱としてヘルスケア事業の投資を拡大してきたが、20年3月期から4期連続で当期赤字に陥っており、4月4日にはグループ全社で2400人規模の人員削減を行うと発表。25年度を最終年度とする3カ年中期経営計画では事業の選択と集中を進めるなど、痛みを伴う改革で収益性改善を急いでいる。
一方の富士フイルムBIは、単独で生きていくために生産拠点の統廃合などを着実に進めてきた。ただ「事業基盤がより強固になるなら組んだ方がいい。自社のためにも、業界のためにもなる」と、同社の浜直樹社長は意義を説明。両社は7―9月をめどに、原材料や部材調達で連携するための共同出資会社の設立を目指しており、富士フイルムBIが株式の過半を保有する計画だ。このほか、トナーの開発や生産でも連携を検討する。
特に「危機感を持っている」(浜社長)のは、半導体などの部材調達だ。コロナ禍で調達困難となったのは記憶に新しい。市場縮小に拍車がかかる状況では、複合機向けではなく自動車向けなどに注力したい部品メーカーも出てくる可能性が高い。“連合”となることで、安定供給やサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化を狙う。
トナーに関しては事業継続計画(BCP)の観点からも、両社の工場で生産できれば有事の際にも代替が効く。浜社長は「日本国内であと1―2カ所トナーが生産できる場所があると助かる」と期待を示し、コニカミノルタの大幸利充社長も「BCP対応力などを強化し、事業レジリエンス力を高める可能性を追求していきたい」とコメントしている。
リコー・東芝テック 開発・生産統合し競争力向
OA業界ではリコーが先行して他社との連携に動いていた。23年5月に、東芝テックと複合機などの開発・生産部門の統合を発表。リコーテクノロジーズを母体に共同出資会社「ETRIA(エトリア)」を7月に設立し、共通エンジンの開発などで競争力を高めていく。また、OKIとはA3モノクロプリンターのプリンターエンジン(印刷機構)を共同開発し、両社の強みを組み合わせた戦略的なモノづくりを展開する。
今後は他メーカーの動向が注視される。最大手のキヤノンは「現時点で他社との協業はない」との考え。さらにシャープや京セラドキュメントソリューションズ(大阪市中央区)の動きにも注目が集まりそうだ。