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「全国一律」義務、議論深めよ…NTT社長・島田明氏の主張

「全国一律」義務、議論深めよ…NTT社長・島田明氏の主張

NTT社長・島田明氏

ラストリゾートに選択肢を

NTT法のあり方に関する議論の中で重要な案件の一つに、ブロードバンドのユニバーサル(全国一律)サービスをどうしていくのかという課題がある。国民生活の向上に非常に重要なため、必要に応じて事業者からも意見を言わせていただける場があればありがたい。

NTT法ではアナログ固定電話をユニバーサルサービスとして義務付けている。だが、2022年に電気通信事業法が改正され、固定電話とブロードバンドサービスがユニバーサルサービスを担うこととされた。今後はNTT法で規定されている固定電話のユニバーサルサービスを電気通信事業法の中にしっかりと組み込んで整理していくことが重要だ。

通信技術が発展して国民のニーズも変化する中、アナログ固定電話だけをユニバーサルサービスとして義務付けるのではなく、ブロードバンドのユニバーサルサービスをどのように作り上げていくのかについて議論を深めなければならない。光回線サービスだけでなく携帯通信や衛星通信の利用を含めた議論をしてほしい。

例えば離島に光回線を敷設する場合、多大な費用がかかる。技術進歩の結果、満足できるサービス水準で安く提供できるのならば、衛星通信も選択肢としてほしい。一番安く提供でき、一定の品質を保てるブロードバンドを国民が享受できる形にすることが重要だ。

もちろん、光回線で提供できる地域は光回線で提供し、それ以外の手段も考えながら一番正しい手段でユニバーサルサービスを構成する必要がある。だが、例えば西日本エリアの6県では光回線シェアが50%を切っている。競争事業者から回線を延伸してユニバーサルサービスを提供する方が明らかに経済的に有意義な場所もある。こうした組み合わせで通信の空白地域をなくすラストリゾート(最後の手段)業務をうまくやる必要がある。米国のように政府が場所に応じて一番安くなる会社を選ぶ仕組みにするべきだ。

NTT東日本、NTT西日本は固定電話でラストリゾート責務を担ってきた。同責務の担い手がいないのであれば当社グループが担ってもよいと申し上げている。ただ、さすがに赤字になるのは厳しい。利益はなくても構わないので、必要なコストを政府やユニバーサルサービス基金から負担してもらう仕組みをつくってほしい。

【略歴】しまだ・あきら 81年(昭56)一橋大商卒、同年日本電信電話公社(現NTT)入社。11年NTT東日本取締役。15年NTT常務取締役、18年副社長、22年社長。東京都出身、66歳。
日刊工業新聞 2024年01月29日

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