ニュースイッチ

海外投資家の日本株売買、現物と先物で異なる動きのワケ

日本株を売買する海外投資家が現物市場と先物市場で異なる動きを見せ、関係者が注目している。日経平均株価が小幅上昇した4月第2週(8―12日)、海外投資家は現物を買い越す一方、先物は売り越した。1―3月に買い遅れていた海外投資家の一部が現物市場で押し目買いをする一方、早めに日本株を購入していたヘッジファンドは先物市場で利食い売りし、異なる動きにつながったとの見方がある。(山田邦和)

海外投資家による日本株現物の売買動向

東京証券取引所が発表した主な投資家層ごとの4月第2週の日本株の取引状況(東京・名古屋2市場合計)によると、海外投資家は証券会社に委託して日本株の現物を約5955億円買い越した。

証券会社委託の取引全体に占める売買代金で海外勢のシェアは6―7割とされ、日本株の相場動向に与える影響が大きい。2023年春以降は企業の資本効率改善を期待した海外資金の流入が膨らみ、日経平均株価が史上最高値を更新する原動力になった。4月第2週も中東情勢の不透明感からで個人投資家が3週ぶりに売り越す中、最終営業日12日の日経平均は第1週の5日から531円47銭(1・36%)上昇。海外投資家が相場を買い支えた構図だ。

一方、同じ4月第2週、日本株の先物(日経225先物取引)市場で海外投資家は1879億円売り越した。売り越しは3月第2週(3月11―15日)から5週連続となる。

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは海外投資家の中身が両市場で異なる可能性を指摘する。「現物市場では1―3月に日本株購入が遅れた欧米のロングオンリー(買いポジションのみで運用する)投資家が押し目買いをする一方、先物市場では早めに日本株を買ったマクロヘッジファンドやCTA(商品投資顧問業者)の利食い売りが出たのかもしれない」(菊池氏)という。

短期の売却であれば近い将来に買い戻しが期待できる。4月第2週は日本株の短期的な上値の重さが意識される局面だった。予想通り相場が下落すれば、「売り」の価格より安い価格で買い戻すことで利益を得られる。

ただ足元の円安で日本株のパフォーマンス(運用実績)はドルベースで悪化している。円安は輸出企業の業績を拡大し日米株にプラスのはずだが「歯止めない円安になるとの見通しが高まれば、外国人投資家にいったん日本株を売る動きが広がる可能性もある」(菊池氏)。

大和証券の坪井裕豪・日米株チーフストラテジストは「円安抑制のために金利を上げることになれば(海外投資家が日本株の持ち高を落とし)株価にも影響が出てくる可能性がある」と指摘する。

日刊工業新聞 2024年4月24日

編集部のおすすめ