観測時間10分の1に…日本無線、新型気象レーダー今秋実証
日本無線(東京都中野区、小洗健社長)は、新型気象レーダー「C帯二重偏波フェーズドアレイ気象レーダー」の実験機を用いた気象観測実験を今秋をめどに始める。従来のパラボラ型気象レーダーと比べ、観測にかかる時間を最大10分の1に短縮できる点が特徴。豪雨災害の前兆をいち早く検知し、避難指示の早期発令につなげることで、被害の最小化に貢献する。実験結果を踏まえながらレーダーの改良を進め、2030年以降の実用化を目指す。
従来のパラボラ型気象レーダーでは3次元空間を観測するために5―10分ほどを要するが、フェーズドアレイ型気象レーダーは電子的にビームの向きを変えられるため30秒―1分ほどに短縮できるという。
また新型気象レーダーには5ギガヘルツ(ギガは10億)帯である「C帯」を採用。台風や線状降水帯といった現象を捉えやすくする。さらに、二つの偏波で観測することで、降水粒子の種別や降水の強さを精度良く観測できる。
雨や雪、雷、積乱雲など多様な気象現象を観測できることから、日本無線の富山営業所(富山県滑川市)の敷地内に新型気象レーダーを設置する。鉄塔を建設中で、塔の上にレーダー装置を搭載する計画。試験運転を行った後、最長で約10年間、気象観測実験をする方針。
新型気象レーダーの開発・実用化に向け、総務省北陸総合通信局からC帯二重偏波フェーズドアレイ気象レーダーに対応した実験試験局の予備免許を取得した。同レーダーへの予備免許交付は国内で初めてだという。今後、本免許を取得し実験を始める。
日本無線は従来、X帯(9ギガヘルツ帯)のフェーズドアレイ気象レーダーを試験観測してきた。ただ、X帯の気象レーダーはC帯よりも観測範囲が狭いことが課題だったため、C帯の気象レーダーの開発に乗り出した。
日刊工業新聞 2024年4月18日