成長投資2.6兆円・売上高6兆円へ…いすゞ自動車、新中計の中身
いすゞ自動車が事業規模拡大のフェーズに入る。3日に発表した新中期経営計画では2031年3月期(30年度)までに計2兆6000億円を投じ、売上高で24年3月期見通し比約8割増の6兆円を目指す方針を示した。商用車(CV)、ピックアップトラック(LCV)の新車販売は合計で年85万台以上を目指し、世界で100万台の生産能力を整える。稼いだ利益を自動運転など新たな収益源の創出に振り向けて経営基盤を盤石にし、世界で勝つ企業を目指し歩みを進める。
販売面ではCVで30年度に年45万台以上を目指す。21年に買収したUDトラックスと、24年から順次商品の相互補完を拡充する。いすゞはUDの大型トラックを東南アジア諸国連合(ASEAN)や中近東で、UDはいすゞの小・中型トラックをASEANや南アフリカ共和国、豪州、中近東で拡販する。
共通のプラットフォームを用いた「大きなコスト効果のある大型トラック」(南真介いすゞ社長)は28年に日本で、海外では29年に投入する計画。戦略的提携を結ぶスウェーデンのボルボ・グループの技術も搭載する。
LCV事業ではASEANや中近東地域を中心に拡販し、30年度に年40万台以上の販売を目指す。タイで老朽設備の更新や電動車対応などに今後5年間で320億バーツ(約1400億円)を投じるほか、南ア拠点の増産や中南米の生産拠点設置を検討する。多様なパワートレーン(駆動装置)も準備。電気自動車(EV)モデルに加え「できるだけ早い段階でプラグインハイブリッド車(PHV)モデルも出す」(同)方針だ。
グローバルでの生産量を確保するべくCV・LCVの合計の生産能力として現状比約2割増の100万台体制を構築する。国内3工場の生産能力拡充や効率化投資を実行。米国はEVトラックの市場投入に伴い、「いすゞのEV事業を作る拠点」(同)と位置付ける。電池を現地調達して生産能力を増強。エンジニアリング機能も強化する方針だ。
新たな収益源確保のためイノベーション投資には1兆円を投じる。カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)分野に4300億円を充て、全カテゴリーでCN商品を製品構成に加えるほか、30年代の普及期を見据えて価格競争力のあるEVモデルを投入する。
自動運転やコネクテッド分野には3500億円を投資。自動運転技術の獲得やサービスの構築に向け、協業先との実証に取り組み、27年度をめどに特定条件下における完全自動運転「レベル4」のトラック・バス事業の開始を目指す。一連の投資を通じて30年度に既存事業で売上高5兆円に、新事業は30年代に1兆円規模に育てる計画だ。
売上高の拡大幅に比べて販売台数の増加率が少ないのは、新たなサービスを含めた新事業の創出を前提としているためだ。今後は新事業創出を担う専門人材などの拡充が重要になる。
同社は年功序列の人事制度を改め「年齢に関係なく給与が上がる」(同)職務型の新人事制度を24年春から採用する。多様なスキルやバックグラウンドを持った人材を確保し、新たな価値提供につなげられるかが成長のカギを握る。