羽根なし送風機に脚光、土木業界から引き合い急増のワケ
エビスマリン(長崎市、中野浩康代表取締役)が東京都下水道サービス(TGS、東京都千代田区)などと共同開発した羽根のない送風機「ホールエアストリーマ」(HAST)が土木関連業界で注目されている。TGSが同製品を無償で2年間貸与するモニター調査を、2023年夏に始めたのを機に引き合いが急増した。下水道工事などの作業効率が従来の換気装置より高まり、長時間労働の是正や人手不足の緩和につながるといった期待感がありそうだ。
HASTはリング状に配置したノズルから圧縮空気を勢いよく吐出するとともに、その気流が生み出す負圧を利用して周囲の空気も呼び込み、まとめて送風する仕組み。有毒ガスの発生や、酸素濃度の低下による事故を防ぐ効果が見込める。
下水道工事などに使われてきたファン式の換気装置と違い、ダクトがなくても大量の送風ができるため、作業者や機材の出入り口になるマンホールを、ダクトがふさいでしまうといった不便を解消できる。緊急時の避難経路も確保でき、安全性も高まる。価格は消費税抜きで75万円。軽量型の「HAST―e」が同じく65万円。
電子部品の調達難もあり、両製品の普及台数は360台余りにとどまっているが、これらを無償で貸与するモニター企業を、TGSが23年9月に募集したのを境に、注目度が急速に高まった。モニターの応募数は募集枠の2倍に上り、製品に関する問い合わせも5倍程度に増えたという。
背景には時間外労働への規制が強まる「2024年問題」や、高齢化に伴う人手不足が深刻化する「2025年問題」がある。マンホールをふさがなくても大量に送気できる両製品を使えば、現場の作業性も安全性も高まる。
TGSは24年夏にも、2度目のモニター募集を行う方針だ。エビスマリンの寺井良治会長は、製品の認知度が高まれば「年に1万台は売れるのではないか」と、モニター調査第2弾の効果に期待している。