イオン伝導度10倍、東レが開発した空気電池用ポリマー膜の実力
東レは11日、イオン伝導度を従来開発品比10倍に向上した次世代電池用イオン伝導ポリマー膜を創出したと発表した。リチウムイオンがサイト間を飛び移りながら移動する、ホッピング伝導型のポリマー膜としては最高水準の伝導度を実現。またポリマー膜を用いた2液系リチウム空気電池としては、初めて100回の充放電サイクル作動を確認した。
すでに一部顧客へのサンプル供給を開始している。空気電池は2030年以降にプロトタイプで実用化が進むと想定しており、今後は量産化技術を検討する。
次世代電池用のイオン伝導ポリマー膜は、耐熱性と強度を持つアラミドポリマーがベース。リチウムイオンと親和性の高い構造を導入し、リチウム塩を複合化する技術を駆使することで、無孔ながらイオン伝導性を持たせた基本設計とした。これに対し、イオンの動きやすさを最適化したホッピングサイトを高密度に導入したことで、従来品と比べ高いイオン伝導度を実現した。
セパレーターに微多孔膜を用いた場合、電池の充電時に樹枝状結晶であるリチウムデンドライトが空孔に沿って成長し、短絡が生じる可能性がある。また空気電池で2種類の電解液を使用する際も微多孔膜では電解液が混合し、寿命低下につながる課題がある。
こうした背景から、東レは無孔でイオン伝導性を持ち、かつ高強度、高耐熱なポリマー膜の開発を進めてきた。
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日刊工業新聞 2024年3月12日