厚さ5分の1、重さ10分の1…東レが「新ミリ波吸収フィルム」量産へ
東レは第五世代通信(5G)などに用いられるミリ波帯の電磁波を吸収するミリ波吸収フィルムを開発した。20デシベル以上の高いミリ波吸収性能を有し、従来品と比べて厚さは5分の1、重さも10分の1を達成。通信モジュールの小型化や、モビリティーへの適用で設計の自由度向上、ドローン向けでは軽さを生かし、航続距離向上が見込める。
今後サンプル提供を開始し、2025―26年の量産開始を検討。30年に30億円の売り上げを目指す。
従来の磁性体粒子を用いた電磁波吸収シートでは10ギガヘルツ未満しか対応できなかったほか、誘電体粒子を用いたシートでは肉厚・重量感が課題だった。東レは独自のナノ積層技術を応用し、低誘電体層と高誘電体層を交互に積層した多層型ミリ波吸収フィルムを作製。多層構造で、ミリ波吸収量を向上させた。
層の厚みを調整することで、20ギガ―100ギガヘルツ範囲の各周波数の吸収に対応する。用途に合わせて、樹脂の設計も可能となる。金属粒子を添加する従来品と比べ、コストも抑えられる見込みだ。
ミリ波の強い直進性に由来した反射、干渉によって生じる電磁波障害対策には電磁波吸収シートが用いられるが、その重さや厚さが課題となっていた。
日刊工業新聞 2023年08月07日