ニュースイッチ

「浮体式洋上風力発電」商用化へ、経産省が量産効果による低コスト化後押し

「浮体式洋上風力発電」商用化へ、経産省が量産効果による低コスト化後押し

NEDO浮体式洋上風力発電システム実証機「ひびき」

経済産業省は浮体式洋上風力発電の商用化について、構成システムの基盤技術の開発支援事業を始める。国内企業を中心とした協調開発体制を構築し、部品や係留設備、運用管理手法などを共通化。複数種類の浮体式に対応できるようにして、量産効果による低コスト化につなげる。予算は最大40億円で、事業期間は2030年度まで。エネルギー安定供給や産業育成に寄与する浮体式で、国際標準化も視野に競争力強化を図る。

共通基盤開発事業では、発電事業者や浮体メーカー、造船会社などが参画する協調体制を組んだ上で、浮体システムの最適設計基準や大量・高速生産技術、水深1000メートル程度の海底に係留するための技術やアンカー施工技術、遠洋での風の吹き方を観測する手法などの開発を進める。

エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が運用する「グリーンイノベーション基金」で実施中の「洋上風力の低コスト化事業」に、新たなテーマとして加える。NEDOが24年春ごろから公募を始める見通しで、総事業費の3分の2を補助する計画だ。

国土の周囲を海に囲まれる日本では、洋上風力はエネルギー安定供給の有力候補だ。政府は洋上風力で30年に1000万キロワット、40年に3000万キロ―4500万キロワットの案件形成を目指している。次世代洋上風力技術である浮体式は、風力発電技術に造船技術などを組み合わせる必要がある。先行して技術を確立できればアジアをはじめとする海外展開も期待でき、国際競争力向上が見込める。

現状、日本のメーカーは風車事業から撤退し、大型風車の設計製造や調達は海外に頼っている。ただ洋上風力は全体コストのうち風車が占める割合は2―3割程度とされ、係留設備や部品、運用管理システムなど大部分を国産できる可能性がある。サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化や、産業育成の裾野を広げる効果も期待されている。

日刊工業新聞 2024年03月01日

編集部のおすすめ