トヨタが1500cc新エンジン開発加速、水素・合成燃料視野
トヨタ自動車が進めている、新型エンジン開発プロジェクトの一端が分かった。開発しているのは1500cc直列4気筒エンジンで、車両搭載時期は未定だが、早ければ2026―27年にも開発にめどを付ける見通し。補助金の見直しや航続距離などの課題から、世界では電気自動車(EV)シフトが鈍化。利便性の高いハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の需要が増えている。水素や合成燃料などの活用も視野に環境性能の高い高効率エンジンの重要性が高まっており、対応を強化する。
1月に開かれた展示会で、豊田章男会長が新型エンジンの開発に着手したことを明らかにした。同会場では高い環境性能のエンジンとレース向けエンジンの二つの開発を示唆。1500cc直列4気筒のエンジンはこのうち、環境対応型とみられる。上郷工場(愛知県豊田市)で開発し、日本や中国などで走行する車両への搭載を想定する。
脱炭素化の流れを受け、エンジンの環境規制はますます厳しくなると予想される。ただ、足元ではEV需要の一巡やインフラの未整備などにより、現実解としてエンジンとモーターを組み合わせたHVやPHVの価値が再評価されている。需要も旺盛で、トヨタはHVが年間販売500万台を超えるタイミングを、従来の26年から25年に前倒しすることも視野に入れている。
トヨタは地域のエネルギー事情に応じて最適な車を提供する「マルチパスウェイ」を一丁目一番地の戦略に位置付け、この重要性を提唱してきた。EVシフトが過熱した昨今でも方針をぶらさずに、さまざまな顧客ニーズに対応できる体制を整えている。30年の全世界におけるEVの需要予測は3割程度であり、残り7割はエンジンを搭載する車となる。グローバルで事業を行うトヨタにとってエンジン開発は必須の項目となる。環境性能と出力に加え、安価を実現する新エンジンで脱炭素化と顧客ニーズに応える。
独メルセデス・ベンツや米ゼネラル・モーターズ(GM)などはEV需要の鈍化により戦略の見直しを迫られており、トヨタの戦略があらためて評価される形となっている。