国内最大級の歯科医院グループ、突然の倒産劇を引き寄せた失敗
患者激減、固定費重荷に
「東京プラス歯科矯正歯科」の院名で東京都、神奈川県を中心に矯正歯科を運営していた医療法人社団友伸会が2023年9月29日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
友伸会は02年2月に設立。当初、一般歯科や予防歯科を中心に手がけていたが、その後、17年7月からマウスピース矯正を開始した。これを契機に矯正治療を中心とした自由診療にシフトし、21年8月期には年間売上高約86億3300万円を計上。また同年11月から12月にかけて医療法人を5社買収したことから、22年8月期にはグループ全体で年間売上高100億円に達するなど歯科医院グループとしては国内最大級の規模となっていた。
しかし、利益率が高い同法人が開発した自社ブランド「ホワイトライン」を推し進めたものの、これが失敗。想定した集客が確保できなかったどころか、来院患者数が大幅に減少。施設数を増やしたことで固定費負担が重く、資金繰りが急速に悪化した。
こうした状況を受け、22年12月に入り、東京都中小企業活性化協議会の利用を申請し、金融機関などに対し返済猶予を要請。また、同協議会の支援の下、引き続き自主再建の道を探ると同時に、スポンサーによる再建も視野に入れ候補先の選定に着手した。最終的に、スポンサーが決定したことで民事再生手続きにより再生を目指すこととなった。優良とみられていた企業の突然の倒産劇。意図的に粉飾決算を行っていたということではないが、受領した治療費を前受金として計上することなく、受領した治療費をそのまま全額売り上げに計上していたことで、実態と大きく乖離(かいり)し、財務内容は実態に引き直すと債務超過となっていた。
同法人のような、先に一括で料金を受領するビジネスモデルの企業では、こうした落とし穴が潜んでいる場合があるので、どのような会計処理を行っているか注意が必要だろう。(帝国データバンク情報統括部)