過去最大8879億円…ルネサスが米社買収で実現すること
ルネサスエレクトロニクスは15日、プリント基板の設計ソフトウエアをクラウド上などで提供する米アルティウムを買収し、完全子会社化すると発表した。アルティウムは豪州で上場しており、買収金額は91億豪ドル(約8879億円)で、ルネサスとして過去最大。複雑化する電子機器の設計プロセスを効率化できるプラットフォーム(PF、基盤)を顧客に提供する。アルティウムの株主総会などを経て2024年下半期に買収完了を予定する。
買収資金はすべて手元資金と銀行からの借入金で賄う。アルティウムを子会社化することで半導体だけでなく、さまざまな電子機器の設計開発環境を提供するPFを構築し、複雑化した電子機器とシステムの設計・統合などの効率化を実現する。
同日開催のオンライン会見でルネサスの柴田英利社長兼最高経営責任者(CEO)は、「今回の買収はこれまでと大きく性質が異なる。我々の長い将来を規定していく非常に重要なファーストステップになる」と期待を述べた。その上で、「この業界におけるオープンなPFを作る。(事業構造を)PFと従来の半導体のハードウエア企業としてのルネサスの2本柱としていく」と狙いを説明した。
また、クラウドによって低廉で容易な開発環境を整えることで、「エレクトロニクスのデザインや設計をもっともっと多くの参加者の手に届くものにしていく」(柴田社長兼CEO)考えだ。
アルティウムは1985年に豪州で創業し、米カリフォルニア州に本社を置く。プリント基板のソフトウエアツールの提供で高い市場シェアを持つ。23年6月期の売上高は2億6330万ドル(約396億円)。
日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門が統合したルネサスは長く赤字が続いたが、近年は構造改革や収益力の向上で業績が改善し、8日には約19年ぶりの復配を公表した。M&A(合併・買収)にも積極的で、米英の半導体関連企業などを傘下にしている。
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