ニュースイッチ

40年以上続く、職人の「頭の中」を数値化する挑戦 —ひとつひとつの現場に向き合い板金加工メーカーの進化・成長をソフトウェアでサポート

理工系×企業ジョブマッチング/キャドマック
記者の目/ここに注目
□目に見えない、言葉にもできない「職人の技」を形にする難しさと面白さ
□社員それぞれの生活を第一に考えた、働き方改革を推進

街中にある工場の看板で「板金」(ばんきん)という文字を見かけたことがある人もいるだろう。板金とは読んで字のごとく金属の板を加工し、立体の部品を作り出す加工法のこと。具体的にはレーザ加工機で板を「切断」し、その切り出した板をベンディングマシンで「曲げ」、それらの部品を溶接で「つなげる」ことでさまざまな形を作り出す。製造された部品は自動車や建築、電子関連など幅広い分野で使用されており、日本の製造業を支える代表的な加工技術の1つだ。キャドマックはそんな板金加工専門ソフトの開発・販売を約40年にわたって手がける。

職人の技術を残し、進化させるための3次元ソフト

代表取締役社長 高垣内 昇さん

「金属を切って、曲げて、と言葉では簡単に言えますが、そこには必ず金属独特の塑性が作用する。職人はその影響を考慮しつつ勘・コツで調整をしますが、私たちの仕事は言わばこの頭の中で行われる調整を数式化してソフトの中で再現していくことです」そう話すのは高垣内昇社長。当初は2次元CADを中心に開発していた同社だが、2011年頃からは3次元CADが開発の中心となっている。たとえば今注目の3次元展開用CADソフト「MACsheet SEG5」は作りたい形状を立体化(3Dモデル化)し編集、そのうえで展開図面を作成することができる。直感的な操作が可能で、細かな修正も簡単だ。

板金加工の現場で長年活躍してきた職人は、図面から3次元形状の部品を頭の中で想像し、加工ができていた。しかしこのような職人は減少の一途で、製造する部品の形状も時代とともに複雑化している。また従来なら板金ではあまり扱わなかった厚板も機械性能向上を求める顧客から注文が増えてきた。今後3次元に対応したCADソフトの需要はますます高まっていくはずだ。

従来の職人がこなしてきた、立体の想像と図面化をソフトで実現。現場の生産性向上に貢献する「MACsheet SEG5」

そのほか、レーザ加工におけるネスティング機能を強化したCAD/CAMソフト「MACsheet IST」や曲げ加工のシミュレーションを行う「MACsheet BEND」、さらにクラウド型生産管理システム「Taktory」など、板金加工をサポートするソフトを幅広く展開。かゆい所に手が届く、利便性の高いソフトを開発する秘訣は「いかに現場に出向きお客様の話を聞くかだ。

「どのソフトも開発後お客様の意見を聞きながら何度もバージョンアップをしてきました。板金加工と一口に言っても、それぞれのお客様の抱えている課題は違う。できる限り多くの現場で活用いただけるよう工夫を凝らすのが開発者の腕の見せ所です。お客様は、当社にとって共同開発者ともいえます」(高垣内社長)

コロナ禍すらチャンスに。誰もが働きやすい社内改革を実施

同社の「変えていく」ことへの柔軟さは近年の働き方改革にも表れている。2020年、コロナ禍を発端に在宅勤務を取り入れた。さまざまなコミュニケーションツールやサービスをその都度取り入れて整備。今では社員の多くが積極的に在宅勤務を取り入れている。

YouTubeを積極的に活用し、ソフトの特色や活用イメージをわかりやすくPR

また、直接の営業訪問ができないという状況をきっかけにオンラインを活用した商談やウェビナーを積極的に開催。なかなか伝わりにくいソフトウェアの特徴や利便性をPRするためにYouTubeチャンネルも開設した。30秒程度の専用CM動画などを公開し、入り口を広げるよう挑戦を続けている。

コロナ禍をきっかけとした上記の改革は多くが若手社員からの発案によるものだ。「何事も挑戦あるのみ。やりたいことをやって、思い切り失敗してほしい。それをバックアップするのが、会社の義務であり自分たちの仕事ですから」と高垣内社長は言い切る。

現在、同社の目標は溶接関連の新たなソフト開発に着手すること。溶接の職人が精度の高い溶接を行うときに重視するのは何と、「匂いと音」!とのこと。さて、それをどう数値化するか、どんなソフトを開発すれば溶接職人の仕事を再現できるのか。課題は山積しているが、その分やりがいも大きい。今までにないソフトを、確実に必要とする場所に届ける。加工技術への好奇心と新しいものを作り出すことに達成感を持つ人材にはこれ以上ない環境だ。

理系出身の若手社員に聞く
家族と生活、そして仕事とやりがい。すべてを大切にできる環境

開発部 主任 倉岡 めぐみさん (2021年入社)

主に板金加工に関する製品関連ファイルを一括して管理するソフト「MACsheet DataPocket」などの開発・バージョンアップなどを手がけています。小さな娘がおり仕事と家庭を両立できる環境を探していたのですが、面接時に「子供さんを第一に」と言ってもらい、入社を決めました。

業務で一番重要なのは「本当にそれは現場で使いやすいか」を実際の現場の使用状況と照らし合わせて考え抜くことと、とにかくやりたいことは挑戦すること。いつでも応援してもらえますし、皆からコメントをもらえるので日々やりがいを感じています。

会社DATA
所在地  東京都港区芝浦3-9-1
設立   1993年
代表者  代表取締役社長 高垣内 昇
資本金  2200万円
従業員数 42人
事業内容 シートメタル用3次元CADソフトウェア製品の開発、販売
URL    https://www.cadmac.net/

特集・連載情報

スキルを活かす!理工系×企業 ジョブマッチング
スキルを活かす!理工系×企業 ジョブマッチング
2025年卒の理工系学生必見!日刊工業新聞特別取材班が上場企業から中堅・中小企業まで独自の技術や製品・サービスを持つ優良企業の特長や将来性、業界での優位性、働き甲斐などについて第三者の視点で紹介します。

編集部のおすすめ