日立が “創業の理念” 世界に示す、小平浪平生誕150周年
つながり深め社会課題解決
日立製作所が創業者である小平浪平(おだいら・なみへい)氏の生誕150周年を記念し、さまざまなプロジェクトを進めている。茨城県日立市の企業ミュージアム「日立オリジンパーク」で小平氏に焦点を当てた初の企画展を開催中のほか、会員制交流サイト(SNS)を通じた情報発信などに取り組む。社会イノベーション事業でのリーダーを目指す中、創業者の理念をあらためて国内外に示すことで、社会課題の解決に向けた他者とのつながりを強めていく。(編集委員・小川淳)
ここ10年、大胆な事業再編を続けてきた日立製作所。その結果、「デジタル」、脱炭素関連の「グリーン」、工場自動化(FA)などの「コネクティブ」の3事業を中核に業績を伸ばし続けている。ただ、BツーC(対消費者)事業を縮小してBツーB(企業間)事業を拡大した結果、「日立という名前は知っていても、どんな事業をやっているのか、必ずしもご理解いただけない部分があるのではと思う」(徳永俊昭副社長)。
日立は現在、経済成長と社会課題の解決を両立する「ソサエティー5・0」に貢献する社会イノベーション事業を促進させるため、3事業を原動力に、さまざまなつながりを模索している。BツーBだけではなく、市民や民間非営利団体(NPO)を含む社会のあらゆるステークホルダー(利害関係者)を巻き込み、ともに課題を見つけて解決していく必要がある。徳永副社長は、創業者である小平氏の理念を通じて「より社外の方に(自社のことを)ご理解いただきたい」と強調する。
小平氏は1874年(明7)に栃木県で生まれた。「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という強い理念を掲げ、1910年に国産初の5馬力誘導電動機(モーター)を製作し、日立創業のきっかけとなった。一方で他の大企業の創業社長に比べると、一般的な知名度は決して高いとはいえない。
そんな中、日立は21年11月に日立オリジンパークを設立し、日立の企業理念と歴史の紹介を始めた。24年からは生誕150周年を迎えた小平氏にあらためて焦点を当て、特に小平氏の残した「正直者」などの言葉に着目し、日記や直筆の書などを紹介している。
また、小平氏をイラストにした初の公式LINEスタンプも発売し、知るきっかけを広げている。
日立は現在、グループで約32万人の従業員がおり、このうち6割を日本人以外が占めるという。グローバル化が急速に進んだ結果、「日立グループというアイデンティティーを今後も維持するためには、シンボリックな何かが必要であり、それは創業の理念」(徳永副社長)という考えもある。
創業者である小平氏の理念を社内外および国内外に広め、日立としての個性をさらに強めていく。
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