ニュースイッチ

国内市場トップシェア「ジン」、サントリーが生産2.6倍…需要拡大見込む理由

国内市場トップシェア「ジン」、サントリーが生産2.6倍…需要拡大見込む理由

国産ジン「翠(SUI)」㊧と「ROKU(六)」

2ブランドで市場けん引

サントリーは蒸留酒のジンの市場拡大を見込み、大阪工場(大阪市港区)の生産能力を2025年に現状の約2・6倍に増強する。国内ジン市場の約7割のトップシェアを持ち、国産ブランド「ROKU(六)」「翠(SUI)」でけん引し市場規模で30年に23年比2倍以上の450億円を見込む。「スピリッツ・リキュール工房」を設置し、浸漬タンク5基などを新設するため約55億円を投じる。(編集委員・井上雅太郎)

7日の戦略発表会で発表し、塚原大輔執行役員は「今後の大きなポテンシャルのあるジン市場を2ブランドでけん引する」と強調した。増強するのは1919年に「築港工場」として開設したリキュール類の主力製造拠点の大阪工場。敷地内にスピリッツ・リキュール工房を設置。浸漬タンク5基(ジン用タンク2基)の建て替え・新設のほか、蒸留釜4基の更新、開発生産設備の導入などを実施する。これにより生産能力は約2・6倍に拡大する。うちジン原料酒は約2倍の増強になる。

25年6月をめどにスピリッツ・リキュール工房を本格稼働させる予定で、新生産設備によるジン原料酒の製造を開始する。

大阪工場に設置する「スピリッツ・リキュール工房」(イメージ)

塚原執行役員は「サントリーは1936年から80年にわたり国産ジンを手がけ、技術と知見がある」と説明。これを基に戦略商品として2017年にクラフトジン「ROKU」を、20年に「翠」を発売した。23年の国産ジンの国内販売実績は122億円。

ジンは大麦やライ麦、ジャガイモなど原料が多様なほか、蒸留や浸漬など製造方法の自由度も高いため、幅広い提案が可能で需要が高まっているという。ROKUと翠の両輪でジンカテゴリーの需要をさらに拡大する。

ROKUは和素材を使用した「旬を味わえる贅沢なジン」をコンセプトとしてマーケティングを強化する。翠はジンの裾野を広げる役割で、家庭内・外でソーダスタイルの食中酒需要の拡大を図る。これにより24年の国産ジンの国内販売で165億円(前年比35%増)と大幅に引き上げる方針。

世界のジン市場はウイスキーに比べ約16%の規模という。これに対し国内のジン市場は同約4%とまだ小さい。サントリーのジンの販売は伸長しているが、一般にジンが浸透しているとは言えない状況。今後、市場全体をどう盛り上げるかが課題になりそうだ。

日刊工業新聞 2024年02月08日

編集部のおすすめ