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1秒に20回計測、タッチセンサー化した畳の仕組みと効果

慶応義塾大学の澤田直春大学院生と杉浦裕太准教授らは、タッチセンサー化した畳を開発した。い草などの畳表の下に静電容量式のセンサーシートを敷く。70センチ×70センチメートルの畳の場合で、3・7センチメートルの分解能で接触点を判別できる。手で触って三角形や四角形などの形になぞると9割の精度で図形を識別できた。スマート家電のスイッチや足運び分析、生活見守りなどの用途に提案する。

自己容量方式の静電容量センサーシートを作製した。縦と横にそれぞれ12本の配線を並べて交差させ、各配線から電場を発生させる。手や足が畳に触れると静電容量が変化する。24本の配線それぞれの静電容量を読み取ると、縦横で触れている位置を判別できる。

1秒間に20回の速度で計測するため、畳に触れた軌跡を捉えられる。実験では三角形など、手で12種類の図形をなぞって判別できるか検証した。触れ始めの始点は2・5秒分のデータから求め、4秒分のデータで図形を識別する。人工知能(AI)に本人のなぞりデータを学習させた場合は93%、他人のなぞりデータでは88%の精度で判別できた。12種類あれば、テレビのチャンネル数に十分な数になる。手書き図形と「進む」「戻る」「上げる」「下げる」などを対応させればスマート家電を操作できる。

センサーシートがシンプルで安価に作れるため、部屋の畳すべてをセンサー化することも可能。死角をなくせる。高齢者の活動量を計測して見守ったり、すり足などの軌跡から足の衰えを推定したりといった応用が見込める。カメラに比べプライバシーを侵害しにくい。

日刊工業新聞 2024年01月31日

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