“ケタ違い”2.2兆円計画…AWSが対日投資でアクセル踏んだ背景
生成AIアプリ・サービスで攻勢
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が対日投資でアクセルを踏んだ―。同社が打ち出した東京と大阪のクラウドインフラへの投資計画「2023―27年の5年間で2兆2600億円」はケタ違いの規模で、巨大プラットフォーマーとしての存在感を示した。同計画にはデータセンター(DC)群の建設に加えて運用や保守の費用なども含まれ、雇用に貢献しそうだ。投資拡大の背景には生成人工知能(AI)分野での競争激化もあり、覇権争いの行方が注目される。(編集委員・斉藤実)
「我々の投資によって、官民問わずデジタル変革(DX)が加速し、人工知能(AI)などの最新技術の利用が広がる。日本のデジタル経済の未来にコミット(確約)することを大変うれしく思う」。AWSジャパン(東京都品川区)の長崎忠雄社長は投資計画の説明会で、AWSがDXの推進で担う役割について強調した。
AWSは09年にAWSジャパンを設立し、クラウドサービスの国内拠点として、11年にAWS東京リージョン、21年にはAWS大阪リージョンを開設した。11―22年のクラウドインフラ関連での投資総額は1兆5100億円に上り、AWSは「(経済効果は)日本の国内総生産(GDP)に換算して1兆4600億円に相当し、年間平均で7100人を超える雇用を支えた」と試算している。
雇用については建設のほか、設備保全、エンジニアリング、ネットワーク関連などの幅広い分野が含まれ、DCを軸とするサプライチェーン(供給網)を日本で築いてきた。27年までの投資計画についての推計はこうした実績に裏打ちされている。
説明会には初代デジタル相を務めた平井卓也衆議院議員も出席し、「日本の産業競争力を強化するためにはデジタル基盤の整備が不可欠。AWSによる日本への長期的な投資を大歓迎したい」と期待を寄せた。
AWSが投資拡大に動く背景には、生成AI商戦での覇権争いもある。AWSは生成AI対応のマネージド型サービス「アマゾン・ベッドロック」を東京リージョンで23年に開始した。
同サービスは生成AIの基盤となる多様な大規模言語モデル(LLM)を選択して、生成AIを組み込んだアプリケーションを簡単に作成できる点が特徴。生成AIの登場に伴ってクラウドサービスで膨大なデータを扱う傾向が強まっており、今回のインフラ投資でこうした需要に応える。
生成AIをめぐっては米マイクロソフトや米グーグルなども日本でのインフラ強化に乗り出しており、巨大プラットフォーマー同士のつば競り合いも注目される。