EVの中核部品「eアクスル」競争激化、愛知製鋼が提案する高性能化の中身
愛知製鋼が電気自動車(EV)の駆動装置「eアクスル」の高性能化に寄与する技術の開発を着々と進めている。2023年末にモーターの高速回転化をはじめとした一連の技術を実車に搭載してテストを行い、実用化の見通しをつけた。各社がeアクスルのラインアップを拡大する中、共通課題である「高出力」「小型化」「軽量化」「省資源化」に資する個々の要素技術や部品をメーカーの需要に応じて提供する考えだ。(名古屋・増田晴香)
EVの走行性能や電費を左右する中核部品のeアクスル。自動車部品メーカーや異業種が参入し、競争が激化する。自動車メーカーの幅広い要望に応えるため、複数の部品をモジュール化したタイプなど選択肢を広げている。
一方で小型軽量化や高効率化の方向性は共通しており、愛知製鋼はこれを実現する要素技術・部品を国内外のeアクスルメーカーに提案する。
EVモーターは毎分2万回転以下が一般的だが、同社独自の磁石「マグファイン」を使用したモーターは同約3万4000回転の高速化を実現。高い電気抵抗率で高速回転の妨げになる発熱を抑え、磁石とローターを一体成形して耐遠心性能を高めた。
モーターの高速回転化に伴い、減速比を高くする必要がある。従来の材料から30%高強度化したギア用鋼を使用し、小型かつ高減速の減速機を実現した。これらの技術を採用すると40%の小型軽量化が可能になるという。
EVの普及に伴う資源不足も課題だが、eアクスルの部品の小型化などにより電磁鋼板や銅などの主要素材の使用を70%程度削減できる。
23年に市販の軽自動車に搭載し、テストコースでの実証に成功した。後藤尚英社長は「車両に応じて多様なeアクスルが出てくると思うが、小型、高出力の流れは変わらない。今の技術プラスアルファで蓄積し、メーカーのお役に立ちたい」と話す。
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