けん引役「スマホ」は需要低迷…村田製作所が急拡大「車載」で依存脱却へ
自動運転追い風、センサー販売好調
村田製作所がスマートフォン向け電子部品に依存しない事業体制の構築を着実に進めている。スマホ向けが業績のけん引役だったものの、中国スマホ市場の低迷などで2024年3月期連結業績は2期連続の減収営業減益を見込む。他方、車載分野の需要が急拡大し、売上高も伸び続けている。中島規巨社長は車の電動化と自動運転の普及次第としつつ「近いうちにスマホ向けと車載向けの売上高比率が並ぶ」と手応えを語る。(京都・小野太雅)
スマホ市場は中国景気の低迷や買い替えサイクルの長期化で低迷傾向にある。村田製は23年度の世界市場を11億1000万台と予想するが、20年度と比較すると需要の4分の1が消えてしまった格好だ。そのため同社のスマホなど通信分野の売上高も20年度をピークに縮小が続いている。
連結売上高に占める通信分野の比率も23年度見通しで全体の40・1%と依然大きいものの、この3年で10ポイント近く低下。業績悪化の最大の要因となっている。一方で車載などモビリティー分野は右肩上がり。売上高比率も23年度は26・9%と、3年前から約10ポイント上昇する見込みだ。
モビリティー分野をけん引するのが、主力のセラミックコンデンサーに加えてセンサー製品だ。慣性力センサーや超音波センサーの販売が好調という。
慣性力センサーは全地球測位システム(GPS)などが届かないトンネル内で正確な車両位置を検知する目的で使われる。村田製が12年に買収したフィンランドのVTIテクノロジーズの技術を応用しており、検出精度が競合製品より高いのが特徴。「(一定条件下で自動運転が可能な)自動運転『レベル3』以上になると不可欠な部品となってくる」と中島社長も期待をかける。
超音波センサーは15センチメートルと近距離での検知を実現し、自動駐車システム向けでの需要を見込む。さらに「音響メタマテリアル」という新技術の開発も進めている。バネ振り子構造を利用した共振を用いることで、物質に対して超音波の透過性を高めるのが特徴だ。超音波センサーと組み合わせれば、車の外観デザインに影響を与えず高い機能を発揮できるという。
現在、センサー事業全体に占める車載向けの売上高比率は約40%だが、自動運転の実用化が進むとともに上昇することは確実。中島社長は「25年ごろにはセンサー事業の車載向け売上高比率が50%を超えるようにしたい」と目標を掲げる。達成すれば、スマホ依存からの脱却も大きく前進することになる。